歩行分析~観察すべきポイントと臨床でよくみる異常現象のまとめ~

歩行分析とは文字通り、歩行を分析すること問題点を明らかにすることです。

そうすることで、運動療法や環境面などアプローチができるようになり、問題点の解決を図ることができます。

 

私たち理学療法士は動作の専門家であり、歩行分析を得意としています。

でも、見るべきポイントがとても多くて、その上たくさんの訓練や経験が必要になります。

正直、苦手とする方も多いでしょう。

 

なのでこの記事で歩行分析に基本的な知識を以下のようにまとめました。

  • 正常歩行のメカニズム
  • 歩行分析の観察すべきポイント
  • 臨床上よく見られる異常現象

私の経験や私見も含まれていますが、この記事を読むことで歩行分析やリハビリでの着眼点を増やすことができます。

どうぞお役立て下さい。

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タップできるもくじ
  1. 歩行周期について(ランチョ・ロス・アミーゴ方式)
  2. Initial Contact:IC(イニシャルコンタクト)
  3. Loading Responce:LR(ローディングレスポンス)
  4. Mid Stance:Mst(ミッドスタンス)
  5. Terminal Stance:Tst(ターミナルスタンス)
  6. Pre-swing:Psw(プレスウィング)
  7. 遊脚相を理解する上で重要な二重振り子運動とは?
  8. Initial-swing:Isw(イニシャルスウィング)
  9. Mid-swing:Msw(ミッドスウィング)
  10. Terminal-swing:Tsw(ターミナルスウィング)
  11. 遊脚相で見られる異常
  12. まとめ

歩行周期について(ランチョ・ロス・アミーゴ方式)

歩行周期とは、脚が地面についてから同じ脚が再び地面に着くまでを言います。

この歩行周期を相にわけて、特徴を捉えることで理学療法士は歩行を分析しています。

 

この記事では、一番臨床で使用される歩行周期の「ランチョ・ロス・アミーゴ方式」に基づいて説明していきます。

 

ランチョ・ロス・アミーゴ方式とは、ドイツの理学療法士のキルステンゲッツ・ノイマンが、歩行分析に関する世界最高峰の「ランチョ・ロス・アミーゴ・国立リハビリテーションセンター」で作ったものです。

ランチョロスアミーゴ方式は、全部で8層でわけられます。

呼び方 略語 日本語訳
  • initial contact
  • イニシャルコンタクト

IC

初期接地
  • loading response
  • ローディングレスポンス

LR

荷重応答期
  • mid stance
  • ミッドスタンス

Mst

立脚中期
  • terminal stance
  • ターミナルスタンス

Tst

立脚終期
  • pre-swing
  • プレスウィング

Psw

前遊脚期
  • initial swing
  • イニシャルスウィング

Isw

遊脚初期
  • mid swing
  • ミッドスウィング

Msw

遊脚中期
  • terminal stance
  • ターミナルスウィング

Tsw

遊脚周期

次に各相の特徴、よく見られる異常などを解説していきます。

Initial Contact:IC(イニシャルコンタクト)

イニシャルコンタクト(initial contact:IC)(初期接地)の定義

  • 歩行周期の始まりと終わり
  • 脚が地面に接触する瞬間

イニシャルコンタクトは、歩行分析の始まりと終わりの一つの基準となっています。

なので、イニシャルコンタクトを基準として観察しましょう。

 

そんなイニシャルコンタクトで必ずチェックするべきポイントは、以下の2つ。

ICのチェックポイント

  1. 踵から接地ができているか?
  2. 大臀筋が収縮しているか?

ICのチェックポイント1:踵から接地ができているか???

イニシャルコンタクトで最も重要なことは踵接地です。

なぜ踵接地なのか?理由はロッカーファンクションのヒールロッカー機能が使えるからです。

 

えっ?ロッカーファンクション?ヒールロッカーってなんなん???

という方は、以下の記事で詳しく解説していますのでよろしければお読み下さい。

歩行に必須!ロッカーファンクションと倒立振り子モデルの機能と役割

続きを見る

このヒールロッカーが機能することにより、踵を中心に下腿と足部が前方へ転がって、重心を前上方に持ち上げます。

なので、ヒールロッカーを実現させるためには踵から接地することがなによりも重要。

踵から接地するためには、足首を上に持ち上げる前脛骨筋という筋肉の働きが必要になります。

前脛骨筋は以下の記事で詳しく解説しています。

前脛骨筋の筋力トレーニングやストレッチ、神経支配、起始、停止を解説!

続きを見る

もし、何らかの原因で踵接地ができずに、ヒールロッカーが使えないとなれば、身体の重心を上方に持ち上げることができません。

ヒールロッカーが使えないとなると、ペンギンのように踵接地が無く、ペタペタ足音を立てて体幹を左右にゆらしながらゆっくりと歩行することになるのです。

これで会社に通勤となると、すごい時間が掛かってしまいますね…

なのでヒールロッカー機能を使うためにも、踵から接地することが重要なのです。

ICのチェックポイント2:大殿筋の収縮が得られているか?

イニシャルコンタクトでの大殿筋の活動は重要です。

大殿筋とは、お尻についている大きい筋肉のことを言います。

大殿筋は、踵接地時に受ける地面からの衝撃を吸収してくれます。

通常、踵接地時の床反力は、股関節の前方を通ります。

この時、慣性力によって体幹・股関節の屈曲が生じますが、大殿筋が収縮することで防いでいます。

 

大殿筋の筋力が低下している場合は、慣性力による体幹、股関節の屈曲を防げないので、前方へ崩れてしまいます。

なので、イニシャルコンタクトでの大殿筋の働きは非常に重要なのです。

イニシャルコンタクトでよく見る異常歩行

脳卒中片麻痺などでよく見かけるイニシャルコンタクトの異常現象のほとんどが、先ほど挙げた2つのポイントができていないことによるものです。

原因は以下の通り

ICでの異常歩行の原因

踵接地が消失する原因

  1. 下垂足(前脛骨筋の運動麻痺、筋力低下)
  2. 尖足(下腿三頭筋の筋緊張亢進)
  3. 歩幅の狭小化(膝関節屈曲拘縮・ハムストリングスの筋緊張亢進など)

大殿筋による衝撃吸収ができない原因

  1. 大殿筋の筋力低下

順に解説します。

踵接地が消失する原因

  1. 下垂足(前脛骨筋の運動麻痺、筋力低下)
  2. 尖足(下腿三頭筋の筋緊張亢進)
  3. 歩幅の狭小化(膝関節屈曲拘縮・ハムストリングスの筋緊張亢進など)
踵接地が消失する原因1:下垂足(Drop Foot)

下垂足(Drop Foot)は、足首を挙げる前脛骨筋が運動麻痺・筋力低下を起こして、足首が上がらなくなった状態を言います。

これだと踵からではなく、つま先から地面に着地してしまいます。

以下の動画は下垂足の患者さんの歩行です。

踵ではなく、つま先から接地していますね。

 

改善策として、前脛骨筋の筋力増強や、短下肢装具の装着が行われることが多いです。

短下肢装具を装着すると、強制的に足関節を中間位~背屈位で固定できるので、踵接地を可能となってヒールロッカーを機能させることができます。

短下肢装具がない環境の場合、固定力は弱いですが足首サポーターでも十分な方もいます。

踵接地が消失する原因2:尖足

尖足は筋緊張の亢進や末梢神経麻痺などによって、足関節が底屈位のまま拘縮(動かなくなった)した状態を言います。

尖足の画像と尖足とは足首が底屈位のまま動かなくなった状態と書いている画像

そうなると下垂足と同様につま先から着地となってしまうため、ヒールロッカー機能が使えません。

 

尖足を改善する代表的な方法は、以下の3つがあります。

  • 手術でのアキレス腱延長術
  • 筋弛緩剤での治療(筋緊張が亢進している場合)
  • 下腿三頭筋のストレッチング

どれも実施できない場合は靴の中にインソールを挿入して、踵を補高すると歩行が容易になるケースもあります。

 

拘縮改善の第一選択は、基本的に関節可動域練習(ROMex)です。

以下の記事で詳しく解説しています。宜しければ参考にして下さい。

リハビリのROMexって?ストレッチとの違いは?関節可動域訓練の基礎とコツ

続きを見る

踵接地が消失する原因3:歩幅が小さい場合

歩幅が小さくなると、踵接地ができずに足底全面で接地してしまいます。

原因は様々ですが、よく見られるのは膝関節屈曲拘縮などがある場合です。

たまにハムストリングスの筋緊張亢進などにより、膝関節が屈曲位で踵接地している方も臨床場面でよく見かけます。

知って得する歩行分析の視点

なぜスウィングするとハムストリングスの筋緊張が亢進するの?

脳卒中で良くみられる筋緊張異常の「痙縮」は速度依存性という性質を持っています。

足をスウィングすることで膝関節が伸展して、ハムストリングスが急激に伸張されます。

そうなることでハムストリングスの筋緊張が亢進して、膝が完全に伸展できずに屈曲位で踵接地します。

その結果、足底全面での接地となってしまいます。

そういった方は、スウィングの後半にハムストリングスを触診すると、ピクっと収縮するので良くわかります。

一度評価してみて下さい。

超わかりやすい!筋緊張の種類・痙縮のメカニズム・評価・治療を解説!

続きを見る

大殿筋による衝撃吸収ができない原因1:大殿筋の筋力低下

大殿筋が筋力低下している場合、体幹・股関節屈曲を代償的に防いだ「大殿筋歩行」という異常歩行が見られます。

体幹を伸展、骨盤を後傾し、床反力を股関節後方へ通して、大殿筋を収縮させずに歩行が行えます。

近位筋が萎縮する「筋ジストロフィー」の患者さんなどによく見られますが、たまに脳卒中片麻痺の方でも見られます。

動画だと以下のような歩行です。

一度、お腹を前に突き出しつつご自身でお尻を触りながら歩いて見て下さい。

大殿筋が収縮しませんよ!

 

障害をお持ちの方は意識しなくとも、力学的に理に適っている動作をされるわけなので、人間はすごい。と思ってしまいますね。

 

イニシャルコンタクトで大殿筋が働かないと、次の相に悪影響を与えます。

なので後方から歩行介助する時などは、必ず「大殿筋」を触診して、体幹と骨盤が制御できているかを評価しましょう!

イニシャルコンタクトのチェックポイントまとめ

イニシャルコンタクトでは以下の2つを意識して評価しましょう!

ICのチェックポイントまとめ

  • 踵接地ができているか?
  • 大臀筋の収縮が得られているか?
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Loading Responce:LR(ローディングレスポンス)

ローディングレスポンス(Loading response:LR)(荷重応答期)の定義

  • 始まり:イニシャルコンタクト
  • 終わり:反対側の脚が地面から離れた瞬間

ローディングレスポンスは、対側の下肢から荷重を受け継ぐ時期です。

チェックポイントは以下の2つ。

LRのチェックポイント

  1. ヒールロッカーが機能できているか?
  2. ダブルニーアクションが見られるか?

LRのチェックポイント1:ヒールロッカーが機能できている?

先ほどのイニシャルコンタクトで説明しました「ヒールロッカー」が行われる時期です。

踵接地から足底全面接地にかけて、踵を軸に下腿が前傾して重心を上方に持ち上げます。

このヒールロッカーを実現させるために必要な筋は、先ほどイニシャルコンタクトで説明した「前脛骨筋」です。

前脛骨筋は、踵接地後にヒールロッカーが行われている最中に、足関節の背屈を維持して踵を支点にスムーズに回転できるように働きます。

 

もしも踵接地後に前脛骨筋が働いていなければ、「FootSlap(フットスラップ)」という異常が出現します。

Foot Slap(フットスラップ)

FootSlap(フットスラップ)」とは、前脛骨筋が運動麻痺などによって筋がコントロールできない場合、踵接地後に急速に足部が底屈して床に「パタン!」と音を立てて足底接地する現象のことを言います。

正常では、踵接地後に前脛骨筋が収縮して、足部と一緒に下腿が前方へ転がるのですが、Footslapの場合、足部のみが底屈して下腿が後方に残されたままになります。

動画だと以下のような歩行です。

これだと、うまくヒールロッカー機能が使えません。

フットスラップによる弊害(膝関節屈曲・反張膝)

フットスラップはヒールロッカー機能がうまく使えないだけではなく、膝関節が前方に動く慣性力が働いて、膝関節の屈曲角度の増加が見られます。

これだと、膝関節の大腿四頭筋に過度な負荷が掛かってしまって効率的な歩行とは言えません。

 

また大腿四頭筋の運動麻痺や筋力が低下してしまっている方は、FootSlapから「反張膝(back knee)」になる方もいます。

反張膝(back knee):膝が伸び切って、反り返ってしまっている状態

これらの主な改善策として、以下の2つがあります。

  • 前脛骨筋&大腿四頭筋の筋力トレーニング
  • 短下肢装具の装着(底屈制動が機能のある装具(ゲートソリューション、シューホーンブレース、オルトップ))

ちなみにFoot Slap(フットスラップ)が出現しながらでも、町中を歩いている方もいます。

なのでFootslapが出現していたからといって、歩行ができないというわけではありません。

 

しかし効率の良い歩行を望むのであれば、改善できるように考えていきましょう!

LRのチェックポイント2:ダブルニーアクションが見られるか?

歩行周期のうち、立脚期と遊脚期にそれぞれ1回ずつ膝関節が屈曲します。

これを「ダブルニーアクション(double knee action)」と言います。

更に細かく言うと、立脚期のローディングレスポンスで膝関節が約20度屈曲することを「第1ニーアクション」と言います。

 

ローディングレスポンスでは、この第1ニーアクションが非常に重要となります。

 

突然ですが、皆さんは卵を割れないようにキャッチするとき、どのようにキャッチしますか?

大体の方は手を卵の落下速度に合わせて、力をいなしてキャッチすると思います。

この第1ニーアクションの役割も同じで、地面からの衝撃を吸収するために膝関節を屈曲して、いなしています。

なので、ローディングレスポンスでは「いなす」際に必要な大腿四頭筋の筋力も重要となってくるんですね。

もし、この20度の膝関節屈曲が見られない場合は、その後の歩行に悪影響を及ぼします。

大腿四頭筋に筋力低下を認める場合

大腿四頭筋に筋力低下を認める場合、ローディングレスポンスで「膝関節屈曲角度の増加&膝折れ」や「反張膝」が見られ、次の相に悪影響を及ぼします。

ローディングレスポンスのチェックポイントまとめ

ローディングレスポンスはいかに対側下肢からの荷重をスムーズに受け継がれているかが重要です。

以下の2つを意識して評価しましょう!

LRのチェックポイントまとめ

  • ヒールロッカー機能が使えているか?
  • ファーストニーアクションができているか?
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Mid Stance:Mst(ミッドスタンス)

ミッドスタンス(Mid stance:Mst)(立脚中期)の定義

  • 始まり:反対の脚が地面から離れた瞬間
  • 終わり:観察している脚の踵が床から離れた瞬間

この時期は、重心が最上位となる時期です。

 

ミッドスタンスでのチェックポイントは以下の3つ。

Mstのチェックポイント

  1. アンクルロッカーが機能されているか?
  2. 重心が最上位まで持ち上げられているか?
  3. 体幹と骨盤は真っすぐか?

Mstのチェックポイント1:アンクルロッカーが機能できてる?

アンクルロッカーとは、足関節を軸にして下腿が前傾する運動のことを言います。

このアンクルロッカーにより、スムーズに重心を前方へ移動することができます。

アンクルロッカーが機能できないよくある原因に足関節背屈制限によるものがあります。

背屈制限による異常現象

足関節の背屈制限がある場合は、重心を前方に移動できません。

そのため、体幹・股関節の屈曲や骨盤の回旋を行って、重心を前方に移動させようとします。

改善方法としては、背屈制限の原因を取り除くことが重要になります。

背屈制限のよくある原因は、下腿三頭筋の拘縮などがあります。

Mstのチェックポイント2:重心が最上位まで持ち上げられているか?

ミッドスタンスで、重心が最上位まで持ち上がって次の相で落下します。

そうなることで、位置エネルギーを運動エネルギーに変換することができて歩行速度の加速が生み出されます。

でも、重心を上方へ持ち上げられない場合は、重心が落下するエネルギーを利用できません。

よって、筋により推進力を得なければならないために、非常に疲れやすくなります。

なので、ミッドスタンスで重心を最上位にすることは、効率的な歩行をする上ですごく重要なことなのです。

Mstのチェックポイント3:体幹と骨盤は真っすぐ?

体幹と骨盤の位置関係が崩れると、次の相に悪影響を与えます。

 

多いのは、骨盤に付着している中殿筋の筋力低下による異常歩行です。

中臀筋筋力低下により、トレンデレンブルグ歩行デュシェンヌ歩行という2つの異常が出現します。

ドレンデレンブルグ歩行とデュシェンヌ歩行

トレンデレンブルグ歩行は、筋力が低下していない側に骨盤が下制します。

デュシェンヌ歩行は、筋力が低下している側へ体幹を側屈します。

必ずしもこの2つの異常現象が出現したからといって、原因は「中臀筋の筋力低下」というわけではありません。

非常に臨床では多く見られますので覚えておきましょう。

ミッドスタンスのチェックポイントまとめ

Mstのチェックポイントまとめ

  1. アンクルロッカーが機能されているか?
  2. 重心が最上位まで持ち上げられているか?
  3. 体幹と骨盤は真っすぐか?

見るポイントは多いですが、しっかり評価していきましょう!

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Terminal Stance:Tst(ターミナルスタンス)

ターミナルスタンス(Terminal Stance=Tst)(立脚終期)の定義

  • 始まり:観察している脚の踵が床から離れた瞬間
  • 終わり:反対側のイニシャルコンタクト

この時期はミッドスタンスで最上位となった重心が一気に落下して、速度が増す時期です。

 

ターミナルスタンスでのチェックポイントは以下の1つ。

Tstでのチェックポイント

  • フォアフットロッカーが機能されているか?

Tstでのチェックポイント:フォアフットロッカーが機能されているか?

ロッカーファンクションの中の1つ、フォアフットロッカーは、中足指節関節(MP関節)を回転軸として重心を前下方へ移動させる役割を持っています。

この機能で、前方への推進力が生まれます。

このときに重要な筋は下腿三頭筋で、遠心性収縮を行い最大筋力の80%働きます。

 

加速を生み出すために、下腿三頭筋の収縮によって地面を蹴る!

・・・とイメージされている方もいると思いますが、実はそうではありません。

 

膝関節の伸展したまま底屈を維持」することで、重心の前下方へ緩やかに移動し、前方へ加速させているのです。

なのでフォアフットロッカーを使うためには、下腿三頭筋の筋力膝関節が伸展が重要になります。

膝関節伸展位でフォアフットロッカーが機能していないケース

膝関節伸展位でフォアフットロッカーを機能することで重心の下降が緩やかになります。

その結果、より前方への加速は増します。

 

でも、ここで膝関節が伸展していないと重心が急激に落下してしまって、前方への推進力が失われてしまいます。

よくある原因として、下腿三頭筋の筋力低下(遠心性収縮)などがあります。

その場合は、下腿三頭筋の筋力低下増強運動(遠心性収縮)や背屈制動のついた短下肢装具(SHBなど)を装着してみましょう。

ターミナルスタンスのチェックポイントまとめ

Tstのチェックポイントまとめ

  • フォアフットロッカーが機能しているか?
  • 膝関節は伸展位か?

Pre-swing:Psw(プレスウィング)

プレスウィング(pre-swing:Psw)(前遊脚期)

  • 始まり:反対側のイニシャルコンタクト
  • 終わり:観察している脚のつま先が床から離れた瞬間

プレスウィング(pre-swing:Psw)(前遊脚期)は、スウィングと書いているので遊脚相と思いがちです。

でも実は立脚相に分類されます。

 

pre は「事前に」という意味なので「pre-swing=スウィングする前」ということになります。

プレスウィングのチェックポイントは以下の1つ。

Pswのチェックポイント

  • 股関節をしっかり伸展できているか?

Pswのチェックポイント:股関節がしっかり伸展できているか?

股関節の伸展が重要か?という理由は

股関節の伸展で腸腰筋が伸張されて、その力が解放することによりスウィングされるからです。

筋を輪ゴムのように考えるとイメージ易いと思います。

輪ゴムは、引き伸ばしたら、勢いよく元に戻りますよね?

筋も同じで伸張すると元に戻る力が働きます。

勢いのある安定したスウィングができるかどうかは、プレスウィングのポジションで決まるといっても過言ではありません。

 

この相でしっかりと股関節を伸展してスウィングできていない場合、つまずく人が多くなります。

プレスウィングのチェックポイントまとめ

Pswのチェックポイントまとめ

  • 股関節伸展がしっかり出来ているか?

立脚期から遊脚期に切り替わる相で、転倒することが多い時期でもあります。

安定したスウィングを行うためにもしっかり評価しましょう。

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遊脚相を理解する上で重要な二重振り子運動とは?

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ここまで長々とお疲れ様でした!

さぁ、ここからいよいよ遊脚相に入ります。

遊脚相とは、地面に足がついていない相のことを言います。

 

遊脚相に求められる役割は、トゥクリアランス(地面と足との距離)を保つことです。

トゥクリアランスが小さ過ぎるとつまずいて転倒してしまいますよね。

 

トゥクリアランスを保つためには、遊脚相で膝関節をしっかり屈曲しなければなりません。

ですが、私たちは意識して膝関節を屈曲しているのか?というと違います。

 

そこで、遊脚相を理解する上で重要なのは「二重振り子運動」です。

 

遊脚相のスウィングを二重振り子のようにして考えると、大腿が加速するに従って下腿は慣性力により、少し遅れて前へスウィングされます。

スウィング時に働く筋はありますが、実際には補助程度です。

ほとんど力を入れなくても、自動的にスウィングに加速がついて、膝が曲がります。

 

なので、先ほど解説した立脚相のターミナルスタンス・プレスウィングで股関節伸展がしっかりとできているか?によって遊脚相で良いスウィングができるかが決まるといっても過言ではありません。

 

以上を踏まえた上で遊脚相(イニシャルスウィング・ミッドスウィング・ターミナルスウィング)の3相に移ります。

Initial-swing:Isw(イニシャルスウィング)

イニシャルスウィング(initial-swing:Isw)(遊脚初期)

  • 始まり:観察している脚のつま先が床から離れた瞬間
  • 終わり:両側の下腿が矢状面で交差した瞬間

プレスウィングでの股関節伸展により、引き伸ばされた腸腰筋が解放され、下肢が勢いよく前にスウィングする時期です。

先ほど解説した二重振り子の原理により、自然と膝関節が屈曲します。

 

ここでは補助として大腿二頭筋短頭、縫工筋、薄筋などが収縮します。

またトゥクリアランスを拡大するために、足関節背屈が出現する時期で前脛骨筋、長趾伸筋、長母指伸筋なども収縮します。

Mid-swing:Msw(ミッドスウィング)

ミッドスウィング(Mid-swing:Msw)(遊脚中期)

  • 始まり:両側の下腿が矢状面で交差した瞬間
  • 終わり:観察している脚の下腿が床に対して直角になった瞬間

ここでは、遊脚相の中で一番トゥクリアランスの確保が重要となる時期です。

十分なトゥクリアランスが保たれているか観察しましょう。

Terminal-swing:Tsw(ターミナルスウィング)

ターミナルスィング(Terminal-swing:Tsw)(遊脚終期)

  • 始まり:観察している脚の下腿が床に対して直角になった瞬間
  • 終わり:観察している脚が床に触れた瞬間(イニシャルコンタクト)

この相の役割は、イニシャルコンタクトを迎える準備が重要となります。

 

この時期はスウィングが加速しないように、下腿後面のハムストリングスが、遠心性収縮してスウィングを減速させます。

それにより、緩やかにイニシャルコンタクトで踵接地が可能となります。

遊脚相で見られる異常

遊脚相でみられる代表的な異常を以下の2つにわけて解説しています。

イニシャルコンタクトの異常歩行の原因

  1. ぶん回し歩行
  2. トゥクリアランス低下による躓き

遊脚相で見られる異常1:ぶん回し歩行

脳卒中片麻痺に非常に多くみられる歩行です。

遊脚相で膝関節の屈曲や足関節背屈などが得られない場合、トゥクリアランスが保てません。

そのため股関節を外転、外旋させてスウィングさせて、足をぶん回しているように歩行を行います。

大体は、遊脚相でトゥクリアランスを保つことができないレベルの下肢の運動麻痺や筋緊張亢進などで見られます。

動画だとわかりやすいと思います。

改善策は、ぶん回し歩行の原因に対してアプローチすることになります。

動画のような足首であれば、装具を履けばトゥクリアランスは改善できそうです。

ほかに非麻痺側の靴に補高を入れることでも同様にトゥクリアランスを改善できそうですね。

動作を反復して練習することでも可能かもしれません。

評価する方が何が原因かと考えるかで変わってきますので、そこが歩行分析のおもしろいところでもあります。

遊脚相で見られる異常2:トゥクリアランス低下による躓き

遊脚相の異常のほとんどがトゥクリアランスの躓きによるものです。

躓くにあたって様々な要因が考えられますが、遊脚相のみの原因ではなく、立脚相に起因するものが多いです。

トゥクリアランスって何?

トゥクリアランスが低下する要因は?という方は以下の記事で解説していますのでご覧ください。

歩行におけるトゥクリアランスとは?意味や低下の原因を解説!

続きを見る

まとめ

歩行分析に必要な理解しておきたい、メカニズム・チェックしておきたいポイント・臨床でよくみられる異常歩行についてまとめました。

 

ここの記事の内容が全てではありません。

ですが

 

ヒトってどうやって歩いているんだろう?

なんでこんな異常歩行になるんだろう?

 

などを考えてもらうきっかけになってもらえれば、とてもうれしいです。

 

他にも動作分析関連記事を書いていますので、宜しければ参考にして下さい。

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シロマツ
最後までお読み頂きありがとうございました。
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