こんにちわ。理学療法士のシロマツと申します。
動作観察・動作分析ってすごく悩まされますよね・・・
特に実習生の方はかなりご苦労されていると思います。
学校でも授業を受けるのですが、ほとんどの方が不十分なまま実習へ放り出されます。
臨床では全く使い物にならなかった!という実習生の方も多いと思うんです。
なので今回は、前半は、動作観察、後半は動作分析にわけて、考え方や、レポートの書き方のコツなどを解説していきます。
決してこの方法がゼッタイに正しい!というわけではないですが
何をしていいかわからず、ずーっと患者さんやパソコンのまえで1人で悩んでいるんなら、ぜひこの記事を参考にしてもらえればと思います。
少しでもあなたとあなたの患者さんにお役に立つことを願っています。
動作観察と動作分析の違い
どっちも一緒じゃないの???と思ってしまいがちですが、違うんです。
- 動作観察=目に見える動作のそのまんまを書く。
- 動作分析=動作観察で得られた情報を元に、どこが悪いのかを導く分析の過程を書く。
上記のような違いがあります。
リハビリは誰にでもできるんです。
でも、理学療法士や作業療法士は、この能力があるからこそ専門性の高いリハビリが提供できるんです。
なので、この能力は、臨床でめちゃ大事!
学生時代からでもビシバシ鍛えておく必要があります。
動作観察について
では動作観察から解説していきますね!
動作観察のルールは下記の2つ。
- 動作観察に自分の考えを記載してはいけない
- 重心の存在を書いてはいけない
例えば「転倒しそうになる」などの自身の主観的なイメージや「重心が外側へ動揺し」など目に見えない重心を記載するのは、実習レポートでは地雷です。
できれば書かないほうが無難ですよ!
一方、動作分析は重心やモーメントアーム無しでは分析できないので、存在を記載してもOKです。
動作観察の意義・目的
では、動作観察はなんのために必要なのでしょう?
意義・目的は、全部で7項目あります。
- 動作の実用性を把握する。
- 正常動作とは違った運動を把握する。
- 動作の改善度を把握する。(再評価)
- 全ての評価結果と統合と解釈する。
- 検査・測定の追加に役立てる。
- 動作練習のプログラムに役立てる。
- 二次的障害の予防に役立てる。
いや、めっちゃあるがな!めんどくさ!
と思う気持ち、わかります!
でも、動作観察を日々繰り返しているセラピストは無意識のうちに複数の項目を同時に検討しています。
と言っても、慣れないうちは一気に複数の意義・目的を意識して動作観察なんてできないので、7つのうちどれか1つに絞って動作観察をしましょう。
そうすれば、グンと観察し易くなりますよ!
動作観察の記載のルール・コツ
動作観察にはレポートに記載する上でのルールやコツがあるんで、サラッと学びましょう!
環境を記載しよう
動作は、環境に大きな影響を受けます。
もし、環境によって影響を受けやすい患者さんを評価する場合は、可能は範囲で評価した環境を症例レポートなどに記載しておきましょう。
具体的には、日付、時間、場所、服装、履物、歩行補助具、介助者などです。
例えば、注意障害がある患者さんに、たくさんの人がいるリハビリ室で歩いてもらうのと、誰もいない病棟の廊下で歩いてもらうには、パフォーマンスが違いますよね?その場合、場所の記載が重要になってきます。
また、時間帯によってon-off現象が激しいパーキンソンの患者さんの場合、時間は重要な情報となってきます。
そのような患者さんの場合、環境面の記載があると、読む側からすれば、動作への影響がイメージし易いですよね。
前額面・矢状面から観察しよう。
斜めからの観察では、各関節がどんな状態なのか、なんのこっちゃわかりませんよね。
なのできっちりと前額面・矢状面から観察しましょう。
また、許可を得た上で、関節が見えるように、シャツやズボンの裾を捲ると、更に詳細な観察ができます。
相にわけて記載しよう
いきなり、文章で、体幹が屈曲し、股関節が屈曲、その後、足関節が背屈し・・・・って書かれても
えっ?わけがわからん!いつのタイミングの話!!!!????
ってなりません?
動作を、相にわけずに記載すると、伝わりづらくなります。
なので、見やすくなるように動作を相にわけて記載しましょう。これはゼッタイです。
歩行を相にわけると、ランチョ・ロス・アミーゴ方式が現在の主流です。
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立ち上がりであると、各動作の相は、体幹前傾相・臀部離床相・体幹伸展相の3相にわけられます。
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寝返り・起き上がりは複数の動作パターンが存在するので、色んな相分けを使い分ける必要があります。下記の記事を参考にしてみて下さい。
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動作観察のポイント
ここからは実際に動作観察を行う手順について学んでいきましょう!
動作観察のポイントは、
- 動作の特徴を掴む。
- その特徴を各相にわけて文章にする
たったこれだけです。
動作の特徴を掴むには、正常動作を理解しておかなければいけません。
そのため、動作観察の参考書を見て正常動作の特徴を覚えたり、健常者の動作を日々観察しておきましょう。
町を歩いていても、電車の中や、学校でも、教材はどこにでもいます。
知る人ぞ知る、正常動作、動作分析の鉄板参考書です。
写真が多く使われていてめっちゃわかりやすい。
実習生時代に出会いたかった・・・
立ち上がり動作観察【実践】
ここで、立ち上がり動作観察を実際にやってみましょう。
左片麻痺の方で、立ち上がり動作は、1分~1分10秒の間に行われます。
step1:動作の特徴を掴もう
さて、この方の特徴は何でしょうか?
一度、ご自身で観察してみて下さい。
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では、下記に私が思った特徴を挙げていきます。
開始肢位
- プラットフォームを左手で支持している。
- 体幹が右側へ側屈している。
- 左足よりも、右足の方が後ろにある。
体幹前傾相
- 数回、体幹前傾の際に助走をつけている。
- 右前方へ前屈する。
臀部離床相
- 左手関節の屈曲が増大する。
- 臀部離床時に下腿の前傾がない。
- 右下腿をプラットフォームに押し付けている。
伸展相
- 下肢は伸展しているが、体幹は屈曲位のまま
立位
- 体幹右側屈が残存
ざっと、こんなところでしょうか。
もし、ここまで、特徴を割り出せたら、あとは、これらをつないで文章化するだけです。
step2:文章化しよう!
次は、環境面や、相にわけて文章を連結していきましょう。
立ち上がり動作観察
- 環境:プラットフォーム、介助者なし。
- 開始:端坐位でプラットフォームを右手で支持しており、体幹が右側へ側屈している。また左足部と比較して、右足部が後方に位置する。
- 体幹前傾相:数回、体幹前傾の際に助走をつけ、右前方へ向かって前屈する。
- 臀部離床相:両側の下腿の前傾が見られず、右下腿をプラットフォームに押し付けている。また臀部離床と同時に、左手関節の屈曲が増大する。
- 体幹伸展相:体幹は屈曲位のままで、股関節、膝関節の伸展運動が開始され、完全に伸展してから、遅れて体幹の伸展が見られる。
- 立位:体幹右側屈が残存したまま、動作が終了する。
わかりやすく書くとこんな感じです。ほとんど、上に挙げた特徴と変わらないですね!
動作観察は、動作の特徴さえつかめれば、あとは文章化するだけでもう8割は終わっています。
なので、動作観察をする際は、文章化は置いておいて、まずはザッと特徴を掴みましょう!
多くのバイザーが求めている動作観察とは?
レポートは、バイザーのために書くのではなく、患者さんと自分の学習のために書きます。
しかし、バイザーに自分の考えがうまく伝わらないと、きちんとした指導がもらえなくなるかもしれません。
それってほんともったいない!
なので、動作観察を書く上での文章は、見やすく、読みやすく、異常個所がはっきりしている文章です。
私は、実習生が何に着目して動作を見ているのかがわかれば、例え文章が短くても、良しとします。
一番よくないのは、動作をめちゃくちゃ細かく書いたけど、結局なにが正常で異常なのか、なにに着目して書いたのかがわからない文章です。
現場で働くセラピストは忙しく、難解な文章を読んで理解する時間はないので、短文で何に着目してほしい動作観察なのかがわかればベストです。

動作分析について
動作観察は、客観的に見たままを記載しますが、動作分析は、問題点を導いた考えの過程を記載するので、セラピストの主観的な要素が含まれます。
その主観的な要素は、個々のセラピストの知識、経験によって変化するので、動作分析の答えはセラピストによってバラバラです。
セラピスト100人に動作分析のレポートを見せて、全員がOKを出すなんてものは存在しないんです。
なので、最初のうちは『正解』に捉われる必要なんてない!あなたがそう分析しているのであれば、それでいいのだ!!!
ただ大事なのは、動作分析を行う上でしっかりとした『手順』が踏まれているか?です。
動作分析5つの手順
動作分析の技術が優れている人は多くの情報が頭の中で整理整頓できているので、人にわかりやすく伝えることができる。
どれだけ、動作の細かいポイントがわかっていたとしても、考え方の手順がわからなければ、頭がごちゃごちゃになって要点が整理できないので、まずは手順を学ぶことが大事!
動作分析は、1~5の手順を踏む必要があります。
- 実用性の要素を評価
- どの相で、どんな異常が起きているかを把握
- 動作から機能障害を予測する
- 予測した機能障害を評価する
- 動作の原因をまとめる
考え方の手順をしっかり踏むことができれば、後は、バイザーや教科書などから考えや着眼点などを盗むことで、自分なりの独創的な動作分析ができるようになります。
これから1~5までの手順を解説しますので、参考にしちゃってください!
また、動作分析を考える過程を『関連図』として書き出すことにより、レポートもまとめやすくなります。
関連図は下記の4つのエリア
- 実用性要素
- 観察した異常
- 異常動作の解釈/正常動作の違い
- 機能障害
にわけて考えていきます。
では、順に埋めていっちゃいましょう!
1:実用性の要素を評価
動作分析といっても、何から見ていいのかわかりませんよね~。
まずは大雑把で良いので、その動作の実用性の要素のうち、どれが欠如しているのかを見ます。
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動作の実用性は5つの要素にわけられます。
動作の実用性5要素
- 安全性:動作が安全に遂行できるか?
- 安定性:動作が安定して遂行できるか?(いつでも同じパフォーマンスを発揮できるか?)
- 速度性:動作が速度的に問題なく遂行できるか?
- 耐久性:動作の耐久性は問題なく遂行できるか?
- 社会性:動作は社会的に容認されているものか?
実用性の5つのうち、動作を遂行できないのは、何の要素が欠如しているからか?を把握しましょう!
それがわかれば、関連図の『実用性要素』の箇所に書き込んでください。
上記のような形で徐々に関連図を埋めていきます。
2:どの相で、どんな異常が起きている?
安全性が欠如していると判断したのは
動作のいつのタイミングで、どこが異常だと思ったからでしょうか?
それがわからなければ分析しようがないので先に進めません。
なので、ここでの大事なポイントは
- 動作を相にわける
- 正常動作を理解する
の2つが重要になります。
これはほぼ動作観察と同じ作業ですね。
相は、歩行であれば、ランチョ・ロス・アミーゴ方式
立ち上がりであれば、体幹屈曲相、臀部離床相、体幹伸展相の3相です。
いつその異常が起きているかを明確にしてください。
異常個所がわかれば、下記の関連図のように『観察した異常』欄に埋めましょう。
3:動作から機能障害を予測
観察できた異常個所がわかれば、機能障害を予測しましょう!
例えば、歩行のICでFootSlapが見られる場合、正常歩行では、IC~LRにかけて前脛骨筋の遠心性収縮を行い、スムーズに足底全面接地へ移行します。
なので、Footslapが見られるということは、「前脛骨筋の遠心性収縮がうまく発揮できていない」という可能性が高いので、前脛骨筋の筋力低下や協調性低下が疑われます。
このように、正常歩行と比較しながら、異常な機能障害を予測していきます。
関連図には、「異常動作の解釈・正常動作との違い」の欄に記載します。
4:予測した機能障害を評価
次は、3で予測した機能障害の評価をしていきます。
ここで、単なる予測でしかなかった機能障害を、評価を行い確かなものにしていきます。
5:動作の原因をまとめる。
4で評価した結果、機能障害が明らかとなれば、関連図の『異常動作の原因』に書き込んで、1〜5のステップは全て完了です!!!
関連図が完成すれば、あとは文章化してまとめていきましょう!
関連図を文章にまとめる
やっとここまでこれた!あともうちょっと!がんばってください!!!
文章化にあたって、重要なことは、読み手が見やすく、理解し易い文章を作成することです。
動作は、多くの情報を含んでいるので、混乱し易くなります。
なので、ここでは、いかに動作の文章を見やすく、わかりやすく伝えられるか?の大事なポイントをまとめます!
(色んな動作分析のサイトを見たのですが、例文が載っているサイトは少なかったので、レポートでわかりやすく、見やすい文章をプレゼンするために、この項目でめちゃくちゃ簡単な動作分析の例文を作ってみました。シンプルで簡単すぎる内容ですが、よろしければ参考にしてください!)
観察した異常箇所ごとに文章を書く
文章をどのように構成したらいいのか、迷う方が多いと思います。
見やすく整理するためには、「観察した異常」の項目ごとに文章を作成していきましょう。
そうすることで、現象ごとに話を完結できるのでわかりやすくなります。
動作分析例文
本症例の歩行は、ふらつきを認め転倒リスクが高く、安全性が低下している。観察される現象として、ICでのFootslap、LRで膝折れ、Mstで骨盤が麻痺側へ偏移し、ふらつく場面を認める。その要因を下記に述べていく。ICでのFootSlapに関して、正常歩行では、ICで踵接地後、前脛骨筋の遠心性収縮し、LRにて緩やかに足底全面接地に移行するが、本症例では、性急な足底全面接地を認める。そのため、前脛骨筋の筋力低下、協調性の低下が考えられた。それぞれの予測した問題点に対して評価を行った。筋力低下に対してMMTを行い、麻痺側の前脛骨筋は3であり、筋力低下を認めた。協調性の評価では、Foorpadtestを行い、麻痺側で拙劣さが見られたため、協調性の低下を認め・・・LRでの膝折れに関して・・・

改行をして段落にわける
次はなるべく、内容ごとに改行をして、段落にわけましょう。
動作分析例文
本症例の歩行は、ふらつきを認め転倒リスクが高く、安全性が低下している。
観察される現象として、ICでのFootslap、LRで膝折れ、Mstで骨盤が麻痺側へ偏移し、ふらつく場面を認める。その要因を下記に述べていく。
ICでのFootSlapに関して、正常歩行では、ICで踵接地後、前脛骨筋の遠心性収縮し、LRにて緩やかに足底全面接地に移行するが、本症例では、性急な足底全面接地を認める。そのため、前脛骨筋の筋力低下、協調性の低下が考えられる。
それぞれの予測した問題点に対して評価を行った。筋力低下に対してMMTを行い、麻痺側の前脛骨筋は3であり、筋力低下を認めた。
協調性の評価では、Foorpadtestを行い、麻痺側で拙劣さが見られたため、協調性の低下を認め・・・
LRでの膝折れに関して・・・
たまに、動作分析を改行なしにズラズラと書いている人もいますが、読みづらいですし、何より読む気がなくなります!
積極的に改行してスッキリした文章にしよう!

数字記号を使って区別する
次に、複数ある項目は、数字記号などを使い区別しやすくしましょうや!
動作分析例文
本症例の歩行は、ふらつきを認め転倒リスクが高く、安全性が低下している。
観察される現象として、①ICでのFootslap、②LRで膝折れ、③Mstで骨盤が麻痺側へ偏移し、ふらつく場面を認める。その要因を下記に述べていく。
①のICでのFootSlapに関して、正常歩行では、ICで踵接地後、前脛骨筋の遠心性収縮し、LRにて緩やかに足底全面接地に移行するが、本症例では、性急な足底全面接地を認める。そのため、前脛骨筋の筋力低下、協調性の低下が考えられる。
それぞれの予測した問題点に対して評価を行った。筋力低下に対してMMTを行い、麻痺側の前脛骨筋は3であり、筋力低下を認めた。協調性の評価では、Foorpadtestを行い、麻痺側で拙劣さが見られたため、協調性の低下を認め・・・
②のLRでの膝折れに関して・・・
数字で項目を区別することで、今、何の現象について述べているのかがわかり、更に見やすさが増しましたね!
最初の動作分析の文章化は、内容的にもうまくいかないことが多いですが、せめて文章だけでも、見やすくすることを心がけましょう。

まとめ
動作観察と動作分析の基本的な考え方と、レポートの書き方をご紹介しました。
最初にお話したように、決して、この方法が正しいというわけではありません。
セラピストによっていろんな考え方があります。
でも、慣れないうちは、動作観察・動作分析の中身が合っている、間違っているなどは、それほど重要ではないと思うんです。
そんなの最初から正解してたら、ぼくら療法士の仕事はなくなります・・・(涙
最初は正解をもとめるよりも、問題点を導くための、必要なプロセスを踏んでいるか?が重要だと思います。
なので正解不正解は気にせず、思い切って、精一杯あなたが思う動作観察・分析を行って問題点を導いて下さい!
この記事があなたとあなたの患者さんにお役に立てたなら、なによりうれしいです。
実習・臨床、がんばってください!
