深部腱反射って、なぜ評価するの?
意義、目的がよくわからない!
結果をどういう風に解釈すれば良いの?と思う方も多いと思います。
今回は、深部腱反射を行う意義・解釈・表記方法や反射の出し方のコツなどを解説していきます。
深部腱反射とは?
深部腱反射とは、腱、または腱を叩くと筋が収縮する反射のことを言います。
英語では「Deep Tendon Reflex」と言い、病院のカルテなどではDTRと略して書かれたりします。
中には、脚気(かっけ)と言う方もいますが、それは病気の名前のことで、脚気がどうかを診断する上でこの深部腱反射を行います。
深部腱反射は、様々な箇所で見ることが可能ですが、身体の表層に腱がある筋でしか打腱することができません。
打腱が可能とされている筋を図にまとめるとこれだけあります。
打腱器(打診器)の種類
代表的な打腱器(打診器)は、4種類あります。
- 標準型・・・一番多いシンプルでコンパクトな打腱器。
- 工藤式・・・柄が幅広く、握りやすい。遠心力を利用して打腱できる。
- 円盤打診槌(バビンスキー型)・・・先端が円盤上のゴムになっており、叩打の部位、方向を変えても、打腱できる。
- アレン型・・・打診槌のほかに、音叉や知覚器などを備えている。
初心者の方は慣れないうちは反射を出し辛いと思います。
個人的に、一番反射を出しやすいのは、遠心力をうまく利用できる「工藤式」かなと思います。
指でグリップをつまむような形で力を抜いてスウィングすると反射を出しやすいのでおすすめします。
ですが、徐々に慣れてくると、どんな打腱器でも反射を出すことが可能となります。
最悪。指で打腱するだけでも、反射を出せる箇所もあるので、練習あるのみです。
評価判定基準
一般的に評価基準は、消失から高度亢進の6つにわけられます。
(‐)消失 | 腱を叩打しても反応なし |
(±)減弱 | 腱を叩打して反応するが、わずかなの反応 |
(+)正常域 | 腱を叩打して反応 |
(++)軽度亢進 | 腱を叩打して大きく反応 |
(+++)中等度亢進 | 筋腱移行部を叩打して反応 |
(++++)高度亢進 | 筋腹を叩打して反応し、クローヌスが出現 |
このように、部位ごとの反応で、消失から亢進を評価していくことで、客観的な指標にもなります。
症例レポートなどでの表記方法、書き方は?
特にルールはないのですが、症例レポートなどでは、下記のように人形を書いて記載することが多いです。
ですが、図を用意できなかったり、書くのが面倒な場合は文章のみの記載でも問題ありません。(上腕二頭筋:右(++)左(+)など)
上記の腱反射の図をダウンロードできるようにしています。下記のリンクをクリックよろしければどうぞ。
ダウンロードはこちら:腱反射表記画像
深部腱反射のメカニズム
古来から人間は危険と隣合わせの生活をしてきました。
危険から回避するために、自分の意志とは無関係に出現するたくさんの反射を持っています。
そのうちの一つが「深部腱反射」です。
筋肉に急に伸びるような外力が加わると、筋肉の損傷を防ぐため、筋肉が収縮します。
反射が出現するまでの流れ
- 打腱器で腱を叩打
- 刺激が感覚神経に伝わり脊髄へ
- 介在神経に伝わり、運動神経へ
- 運動神経が筋肉へ収縮するよう命令
- 反射出現
上記の一連の経路を「反射弓」と呼びます。
錐体路の抑制
もし、深部腱反射が、少しの刺激で反応したり、筋がすごい力で収縮したりすると、日常生活に支障が出ます。
そのため、深部腱反射は、脳が「錐体路」という神経を通じて抑制しています。
錐体路は、大脳中心前回〜内包〜延髄錐体交叉〜脊髄側索をいう経路を通ります。
この錐体路のどこかの経路で障害が生じると、錐体路の抑制が外れてしまうため、深部腱反射が亢進してしまいます。
深部腱反射の目的・意義は?
深部腱反射の意義は、「錐体路障害の有無」です。
腱・筋を叩打することにより、錐体路での障害か、もしくは反射弓での障害かを大まかに判別することができます。
評価結果 | 障害の部位 | 麻痺の種類 | 主な疾患 |
亢進 | 錐体路での障害 | 中枢神経麻痺 | 脳梗塞、脳出血、脊髄損傷等 |
消失 | 反射弓での障害 | 末梢神経麻痺 | 椎間板ヘルニア、ギランバレー症候群、脚気等 |
MRIなどの精密機器を用いた方が、確実に錐体路障害の有無が確認できますが、腱反射を行えば、正確さはMRIに劣るものの、簡易的に素早く、判別することが可能となります。
深部腱反射は、筋緊張の評価?リハビリでの評価の意義は?
深部腱反射の意義は、錐体路障害の有無なので、主にドクターの診断に使用されます。
コメディカルが患者さんを担当したときには既に診断がついているので、あまり意味はなさそうです。
じゃぁ、深部腱反射を評価する意味ってないんじゃないの?と思ってしまいますが、深部腱反射は、錐体路障害の有無の他にも「筋緊張の一部」が評価できます。
引用:末廣健児.深部腱反射における検査のポイント.関西理学.12:25-27.2012
深部腱反射と筋緊張は図のような関係性があるとされています。
弛緩~痙縮までは、深部腱反射の程度と比例して筋緊張が亢進しますが、強剛痙縮までになると、常に筋緊張が亢進し、筋収縮を起こしているため、反射の反応としての筋収縮が表面化しづらくなります。
弛緩〜痙縮までは、ある程度の評価指標として使用できるかもしれませんが、強剛痙縮までになると深部腱反射のみでは、評価しきれません。
なので、筋緊張の評価は触診やModified Ashworth Scale (MAS)などの評価と複合的に組み合わせてましょう。
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評価のコツ&ポイント
ここではきっちりと評価できるように、臨床的なコツ・ポイントを解説していきます。
打腱器の握り方
ハンマーのように固く握らず、力を入れずに持ちます。
そのままハンマーの重さを利用して、打腱します。
打腱方法の工夫
腱をそのまま直接、打腱している人はいませんか?
ハンマーで腱を叩く際は、自身の母指を腱の上に当て、その母指を叩きましょう。
理由は2つあります。
- 腱が母指の圧迫により伸張され、反射が出やすくなる。
- もし、ハンマーがブレても、叩打するのは自分の母指なので、患者さんに失礼がない。
是非、意識してみて下さい。
左右差の有無を確認
評価の結果を、「正常・異常」を見極める1つの判断として、左右差を見ることが重要です。(脳卒中片麻痺など左右どちらかが障害されている前提の場合。)
人によっては、反射により筋収縮が強く出現するヒトもいるので、必ず左右差を見ましょう。
左右差がなく(±~++)の範囲内あれば、正常という判断がつきます。
全身に力を抜かせる。
患者さんによっては、緊張して、反射を出したい関節に力がガチガチに入っている人がいます。
その場合うまく反射が出てくれないので、可能な限り検査から注意を逸らせ、力を抜かせましょう。
Jendrassik法(イェンドラシック法)
腱反射が出づらい場合に行う方法です。
方法は簡単で、座位で両手を組んでもらい、左右に強く引き、歯を噛みしめてもらいます。
このJendrassik法を行うことにより、反射が出やすくなります。
Jendrassik法を行って反射が出ない場合、末梢神経障害の可能性が高いでしょう。
まとめ
深部腱反射の意義、目的などについてお伝えしました。
一般的に、錐体路障害の有無や、筋緊張に関する指標として、評価することが多いと思います。
深部腱反射のみで、判断できることは少ないので、他の評価内容と総合的に考えることが必要となってきます。
ただ単に、亢進!低下!のみの解釈にならないように注意しましょう。