という方に向けて、本記事では、リハビリの評価などに使用する「主訴、Need、Hope、demand」の違い、例について徹底解説しています。
結論から言いますと、主訴、Need、Hope、Demandは、下記になります。
- 主訴:患者が一番もっとも苦痛に感じている症状で言葉で表現されたもの
- Need:客観的に患者に必要と思われること
- Hope、Demand:患者が思う希望、要求、最終的な目標や理想の姿
これらは主観的・客観的でわけることが可能です。
主訴、Hope、Demandは主観的に患者が思うこと。
Needは客観的に患者に必要なことに分類されます。
順に解説していきます。
主訴、Need、Hope、Demandの問診のコツ
主訴、Need、Hope、Demandとは、理学療法士などリハビリの専門職が患者の問題点、ゴール設定、治療計画の立案に使用する重要な評価です。
医学的検査などとは違って、これらは全て理学療法士などが患者との会話で取得する情報なので、コミュニケーションが重要となってきます。
主訴、Need、Hope、Demandなどの問診は、自由度の高いものから、徐々にYes、Noで答えられるものへ移行していくことが重要となります。
専門的な用語で言うと、オープンクエスチョンから、クローズクエスチョンに切り替えて行くということです。
ポイント
- オープン・クエスチョン: 「Yes/No」などの選択肢がなく、回答者が自由に考えて答える質問。
- クローズ・クエスチョン:「Yes/No」という形での回答を求める質問。
オープンクエスチョンからクローズドクエスチョンに切り替えていくことで問診がスムーズとなり、情報の精度を上げてくれます。
自分のシナリオ通りに事が進んでほしいと思っている人の場合、自然と誘導尋問のような問診になっていることもあるので注意が必要です。
主訴とは
辞書での主訴は下記のように言われています。
【主訴】患者が医者に申し立てる症状のうちの、主要なもの。
引用:webilio-主訴
リハビリ分野でも同様に「主訴とは患者が一番苦痛に感じている症状で言葉で表現されたもの」を言います。
例えば「腰が痛い、膝が痛い、手が痺れる」などです。
主訴は疾患の症状と関連するものが多い傾向があります。
主訴は1つのみでも良いですが、多すぎると問題点がわかりにくくなるため、最低でも3~5つくらいにしておきましょう。
問診の例
というように質問の形式を変えていき、より具体的にして行くことで問題点の把握に繋がりやすくなります。
例外として、病態失認などがある場合「どこも悪くないのにここにいるのかわからない。」「とりあえず帰りたい」という、身体機能に関係のない場合でも、現在の状態を示す強いエピソードとなるので主訴としてカルテなどに記載するべきでしょう。
Needとは?
Needとは、客観的に患者に必要と思われることを言います。
例えば、本人も家族、医療チーム全体も在宅復帰を目標に取り組んでいる場合、在宅復帰の条件が階段昇降であれば階段昇降がNeedとなります。
ここで患者が「自転車に乗りたい!」といっても、これはNeedになりません。
目標を達成するための最優先事項ではないからです。
言うならばNeedは医療チームが目標を達成するために理学療法士に期待していることと言い換えることができるでしょう。
患者、家族の目標、チームでの目標、理学療法士の個別の評価を行った上でのNeedは決定されます。
そのため患者、家族ら、他職種との情報交換、コミュニケーションは重要となります。
Hope、Demandとは?
聞きなれない英語ですが、それぞれ日本語に訳すると下記のようになります。
- Hope:希望
- Demand:要求
Hope、Demandともほぼ同じ意味として使用されることが多く、患者が思う希望、要求、最終的な目標や理想の姿を言います。
あくまで患者が主観的に思うことであり、それが実現可能か、現実的かは関係ありません。
- 「歩けるようになりたい」
- 「趣味であった釣りをしたい」
- 「旅行に行きたい」
色々なHope、Demandがあリます。
Hope、Demandはその人の生き甲斐、QOLに直結するものが多い傾向があります。
では、Hope、Demandなどの情報を収集してどのように評価や活用すれば良いのでしょうか?
様々な評価、活用方法がありますが一例をご紹介します。
Hopeを利用した例
主訴は、肩が上がらない、肩の筋力がない
目標、Needともに洗髪動作の自立。
Hopeは、釣りがしたい。
担当理学療法士は、肩の運動を行うなら本人のモチベーションが維持しやすい方が良いと考え、釣り竿を使ったスウィング練習を自主練習メニューとして提案した。
Hope、DemandはNeedよりも強い原動力になります。
Needの先にHopeがあるリハビリメニューなら、患者もモチベーションが維持しやすいでしょう。
一方で、NeedとHope、Demandが乖離し過ぎているケースもあります。
NeedとHopeが乖離している例
80歳男性で脳出血発症。端座位保持が困難。
〇〇さんは、退院するまではどのような状態になっていたいですか?
「車の運転を絶対にする!」
この場合、Hope、Demandは「車の運転がしたい」ということになりますが、一般的な予後予測を考慮すると現実的に難しく、Needとかなり乖離していることがわかります。
- 本人の思い描く理想が高いため、危機感、絶望感からストレスが増える場合がある。
- 病態失認の可能性がある。
- 障害受容ができるのか、今後、精神状態を注意して観察する。
- それも受け入れてくれない可能性とある。
と様々な事が事前に考えられますね。
HopeとDemandがNeedと乖離しているからといって、頭ごなしに否定するのではなく
「車の運転を目指すなら、まず上手に一人で座れるようにならなくちゃいけませんよ。」
と肯定しつつ、リハビリのモチベーションが上げる一言を掛けてあげましょう。
動作分析 おすすめ記事
まとめ
リハビリテーションにおいての主訴、Need、Hope、Demandを解説しました。
これらの4つはリハビリテーション評価の基礎となるものです。
この基礎がブレていたらあとの統合と解釈がグチャグチャになるので、患者との正しいコミュニケーションをして精度を上げる問診を行いましょう。