実は歩行障害といっても、様々な種類や原因があるのです。
本記事では、現役理学療法士が動画付きで歩行障害の種類や原因を解説していきます!
歩行障害の種類
何らかの支障があって安全に歩けない障害を「歩行障害(英語:gait disorder)」と言います。
歩行障害には、「異常歩行」という形で、それぞれ特徴から種類で識別されています。
今回は、わかりやすく以下の3つにわけて解説していきます。
- 脳神経疾患に多い歩行障害
- 整形疾患に多い歩行障害
- 心因性や原因不明の歩行障害
脳神経疾患に多い歩行障害
痙性歩行(脳卒中・脳梗塞・脳出血など)
脳卒中などで、筋肉の緊張が上がった状態(痙性)の歩行を言います。
特徴として、腕が常に曲がったまま、足を外側に回して振り出します。
別名、分回し歩行・コンパス歩行とも呼ばれています。
脳卒中後遺症の方に非常に多く、ベーシックな異常歩行です。
小刻み歩行(パーキンソン病)
主にパーキンソン病で見られる歩行です。
歩幅が極端に狭く、チョコチョコと歩きます。
他にもパーキンソン病で見られる歩行では、前方に突進してしまう突進歩行や、一歩目が出にくい、すくみ足歩行などもあります。
抗パーキンソン病薬で改善するケースも多いです。
水頭症などでも小刻み歩行が出現します。
痙性対麻痺歩行・はさみ歩行(脳性麻痺)
主に脳性麻痺の方に見られる歩行です。
足が内股気味で両膝を擦りながら歩きます。
足の形がハサミに似ているので名付けられました。
酩酊歩行(小脳系疾患)
小脳は筋の協調性を整える役割を担っていますが、酩酊歩行は主に小脳に障害を負うと出現する歩行です。
多くは小脳梗塞や、脊髄小脳変性症などに見られます。
手と足、体幹の動きが一定ではなく、バラバラで、開脚気味です。
千鳥足のように、お酒に酔って、酩酊しているようなことから、名付けられました。
足に重りを付けたり、体幹に弾性包帯をしっかり巻いたり、体の部位を固定させると安定して歩けるケースもあります。
動揺性歩行(筋ジストロフィー)
筋ジストロフィーなどの全体的に筋萎縮が進む疾患に見られます。
体幹に近い筋肉から弱くなるので、体幹や臀部を左右に大きく揺らしながら歩行するのが特徴です。
鶏歩(腓骨神経麻痺)
主に腓骨神経麻痺などで、下垂足(足首が上がらない状態)になった場合に見られる歩行です。
足首が垂れたままなため、地面と引っかからないように通常よりも高く足を持ち上げます。
足を高く上げる姿が鶏のようなので、鶏歩と名付けられました。
骨・関節系に多い歩行障害
トレンデレンブルグ歩行・デュシャンヌ歩行(大腿骨頸部骨折術後など)
多くは骨盤を支える中臀筋が弱化した場合に発生し、主に大腿骨頸部骨折の術後の患者さんに多く見られます。
中臀筋の弱化により、見られる歩行は、トレンデレンブルグ歩行(英語:Trendelenburg gait)と、デュシャンヌ歩行(英語:Duchenne gait)の2つです。
トレンデレンブルグ歩行は、弱化している側のお尻が外側へ揺れます。
デュシェンヌ歩行は、代償的に弱化している側とは逆方向に、体幹を斜めに傾けます。
ラテラルトラスト(変形性膝関節症)
ラテラルトラスト(英語:lateral thrust)は、中等度~重度の変形性膝関節症で見られます。
原因として膝の内側の軟骨が磨り減ることで、地面が足に着いた際、膝が外側に動揺します。
膝のサポーターや、足底板を挿入することで軽減する場合もあります。
動画名は「varus thrust(内反動揺)」ですが、ラテラルトラストと同じ意味です。両足にばっちり出ていますね。
スティフニーゲイト(人口膝関節置換術後など)
スティフニーゲイト(英語:stiff-knee gait)は、日本語で直訳にすると「硬い膝の歩行」です。
まるで膝が固まったように、曲げずに歩行します。
原因として、人口膝関節置換術後などの何らかの原因で膝が曲がらなくなった場合に見られます。
墜落性歩行(脚長差)
原因として、左右の足の長さが異なる「脚長差」があり、片方の足が地面につくとき、墜落するように落下します。
一般的には3センチの脚長差で墜落性跛行は出現すると言われています。
動画は、片足のみ靴を履いて強制的に脚長差を作り出した場合のものです。
間欠性跛行(腰部脊柱管狭窄症など)
主に腰部脊柱管狭窄症、閉塞性動脈硬化症などに見られる跛行です。
神経の圧迫や、血流が途絶えたりなどの要因で、長距離を歩くと、足に痛み、痺れが出現します。休憩すると症状は軽減します。
体幹を前屈されると、さらに緩和する方が多いです。
これに関しては、特徴的な歩き方ではないので、動画はありません。
逃避歩行
痛みを避けるために、体重を掛けない歩き方です。
なので、片足で立っている時期(立脚脚)が極端に短くなります。
心因性歩行障害や原因不明の歩行障害
脳神経疾患や整形疾患に関する歩行障害は原因が特定し易いです。
でも、中には身体機能に障害がなくとも、精神疾患からの心因性歩行障害や、原因不明な歩行障害などもあります。
心因性歩行障害~失歩~
精神疾患の転換性障害には「失歩」と呼ばれる症状があり「歩ける能力はあるけど、歩けなくなるケース」があります。
転換性障害とは、運動・感覚など神経症状が発生しますが、身体機能には異常がない精神疾患です。
治療としては、服薬や心理的アプローチなどが主になります。
原因不明の歩行障害
中には、原因不明とされる歩行障害もありますが、大体は上記の転換性障害によるものとされることが多いようです。
でも、診察等で原因を見過ごしている可能性も否定できません。
受診した際は、いつ頃から身体にどのような症状が現れて、歩けなくなったのか?など詳細なことを医師に伝えましょう。
まとめ
リハビリの現場でよく見る、代表的な歩行障害などをご紹介しました。
歩行障害と言われたとしても、必ず上記に当てはまるということはありません。
最近うまく歩けない。
よく転倒してしまう。
という方は、薬やリハビリで改善する可能性があるので速やかに受診して下さい!