歩行介助の方法と3つのコツ!~種類・目的をリハビリのプロが解説~

在宅でリハビリにお伺いしたときに、よく家族の方から

歩行を介助するのが怖い!
どうやって歩かせてるの?コツとかあるの?

などなどの相談や質問を受けることが多くあります。

 

歩行介助は、ちょっとした歩かせ方のコツと、その人に適した歩行介助の種類や選択方法がわかれば、安全に楽に歩かせることができます。

本記事では、毎日患者さんと歩行練習を行っている理学療法士のわたしが

実践的な安全で楽な歩行介助の方法と選び方をご紹介します。

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歩行介助に必要な要素

先ほどお話した通り、歩行介助は、安全にそして楽に歩行介助できれば一番です。

そのため歩行介助に求める要素は以下の2つです。

  • 安全性(安全に介助できるか?)
  • 安楽性(楽に介助できるか?)

安全性が欠けてしまった場合、転倒する可能性が高くなります。

安楽性が欠けてしまった場合、介助者が腰痛になる可能性が高くなります。

どちらも欠けてはいけません。

 

でも、要介護者の身体機能によっては、どちらかを犠牲にしなければならないこともあります。

そういったときは、必ず二人で行うか、介護士や作業療法士、理学療法士などのプロの方に適切な介助方法を聞くようにしましょう。

歩行介助の目的

歩行介助の目的は2つです。

  • 日常生活の移動(介護目的)
  • 歩行練習(リハビリ目的)

基本的には、介護目的・リハビリ目的ともに、安楽性・安全性を重視した歩行介助を心がけましょう。

リハビリ目的での歩行介助では、安全性を重視して過介助となっては、あまり良い歩行練習にならない場合もあります。

歩行練習の効果は高いけど、安全性を減らして、転倒のリスクの高くなるような歩行介助は理学療法士や作業療法士が行うか、その指導の下で行いましょう。

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歩行介助のコツとポイント

歩行介助のコツとポイントは以下3つ。

  • 左右へ重心移動を誘導する
  • 介助者は要介護者と一緒に重心移動をする
  • 自分と相手の距離を意識する
シロマツ
順に解説していきます!

左右への重心移動を誘導する。

立てるけど、歩けない・足が前に出ないというヒトは、基本的に左右への重心移動がうまくできていません。

ヒトの重心は、ちょうどおへその下あたりにあります。

歩いているとき重心は「8の字」を描くので「左右へ重心移動」しなければ歩けません。

 

左足を上げたいときは、右足にしっかりと体重とかけてあげる。

右足を上げたいときは、左足にしっかりと体重をかけてあげましょう。

このように左右への重心移動を誘導すると足が上がりやすくなって、歩きやすくなります。

誘導は、身体の部位(腕、体幹)などを操作して、最終的に骨盤を左右に移動させてあげるだけで良いです。

シロマツ
コツを掴めば簡単にできます!一度意識してみてください^^

介助者は要介護者と一緒に重心移動をする。

歩行介助とは、まさしく「ダンス」そのもの。

介助者と要介護者の息が合わないと、楽に介助ができません。

介助者が要介護者の「動きに合わせて」介助を行うとびっくりするほど楽になります。

 

この「動きに合わせる」というのは、

「介護者の重心移動に合わせて、介助者が重心移動を行う」

ということです。

 

要介護者の左右への重心移動を促しつつ、介護者も一緒に重心移動しましょう。

 

ダンスのように相手の動きに合わせることで、楽に介助ができます。

自分と相手の距離を意識する。

いくら安楽な介助方法でも、ふらついたときに支えきれなかったら転倒してしまいます。

なので、歩行介助に最も重要なのは「安全性」です。

 

この安全性を決める要素は「介護者と要介護者との重心の距離」です。

お互いの重心が近づけば、近づくほど、ふらついたときに、しっかりと支えることできます。

でも重心が遠ければ、力が伝わりづらいのでふらついたとしても、支えきれない可能性が高くなります。

上記の画像のような形で介助しても、介護者と要介護者の重心が離れているため、お婆さんが膝折れでもしたら、女性はほぼ支えきれないでしょう。

なので要介護者の不快感がなければ、近くで介助することに越したことはないんです。

 

もし密着する必要のない要介護者の場合は、最初は念のため近くで歩行介助を行い、心配ないと判断すれば徐々に離れて介助しても良いでしょう。

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歩行介助の種類と選定方法

代表的な歩行介助は下記の4つです。

  • 前方手引き介助
  • 側方片手介助
  • 側方片手腋窩介助
  • 後方腋窩介助

 

正直、いろいろ試してみて

  • 要介護者も歩きやすい。
  • 介護者も歩かせやすい。

というのが一番良いのですが、その人に適した歩行介助を行うには、種類や選択方法などを知っておいた方が歩行介助の幅が広がりますよー!

順に解説していきます。

前方手引き介助

介護関連の本によく紹介されていますが

正直、私はおすすめできません。

リハビリでの歩行介助でも滅多に使いません。

なぜかというと「安全性が低い」から。

詳細な理由は下記の3つ。

前方両手引き介助のデメリット

  • 介助者は、後ろ歩きで進行方向を確認できない。
  • 相手との距離が離れており、転倒しそうになっても支えられない。
  • 触れ合っている箇所が手と肘のみなので、相手の身体を操作し辛い

前から引っ張るような形で介助することが多いですが、何らかの拍子で介助者が力を抜いてしまったり、要介護者が誤って手を離すと転倒して、骨折ということも十分にあります。

また、急に膝折れが起こっても対処できません。

そして、要介護者を前から引っ張る形で歩行練習をしても、自分で重心をコントロールできていないので、いつまでたっても歩行が上手になりません。

なので、リハビリの視点から見てもおすすめできません。

 

しかし、中には視覚障害をお持ちの方など、前方手引き介助でないと歩けないケースもあるので、その場合は仕方ないと思います。

前方手引き介助の選定条件

  • 前方へ体重を掛けないと歩けない
  • 前方から引っ張らないと歩けない
  • 視覚障害があって、進行方向を誘導する必要がある

あまり積極的に使用するべき歩行介助方法ではありませんが、上記の選定条件のように「前方手引き介助しか歩けない」という場合は、使用しても良いと思います。

側方片手介助

介護の現場でよく見かける介助です。

ドラマなどで、高齢者を介護するシーンであれば、必ず側方片手介助で歩行介助していますよね!

こんなシーンあるある!と思わず唸ってしまいそうになります(笑

 

しかし、この歩行介助も、正直おすすめできません。

 

これも介護者と要介護者との距離が離れているため、ふらついたときに支えきれない可能性が高く「安全性が低い」からです。

なので、常にふらつきが見られたり、転倒リスクが高い方には行わない方が良いでしょう。

側方片手介助の選定

  • ひとりでも歩けるけど、不安のある方
  • 片麻痺などの障害部位が左右比対称な方
  • 片方の足に体重を掛けると痛い(荷重時痛)

私が側方片手介助を使う場合は、足に荷重をかけると痛みのある方(荷重時痛)に対して行うことが多いです。

介護者は要介護者の患側に立って、介護者の手を杖代わりにしてもらうことにより、荷重を分散できて痛みが軽減します。

この時、要介護者は肘を30°くらい曲げてると力が入り、支持しやすくなります

お世辞にも安全な介助方法とは言えませんが、場合によっては荷重時痛のある方に対して効果的な介助です。

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側方片手腋窩介助

名前がわからないので、私が勝手につけました(笑

腋窩とは、脇のことを言います。

側方に位置して、要介護者の片手と腋窩を把持します。

イメージとしては「フォークダンス」です。

この側方腋窩介助は、個人的に一番よく良く使用します。なぜなら

  • 密着できるので、安全性が高い
  • 左右への重心移動が促しやすいポジションなので楽に歩行ができる。

という安全性と安楽性の2点が優れているからです。

ふらつきが多く、転倒リスクが高い方であれば、一度試す価値はあると思います。

側方片手腋窩介助の選定

  • いつ転倒するかわからない方。
  • 片麻痺などの障害部位が左右比対称な方
  • 片方の足に体重を掛けると痛い方(荷重時痛)

もしも腋窩を把持して左右への重心移動が促し辛い場合は、腋窩から骨盤へ持ち帰ることで重心移動がし易くなり、歩行が容易となる場合もあります。

後方腋窩介助

この歩行介助方法も、側方片手腋窩介助と同様に

  • 密着しているため、安全性が高い
  • 左右への重心移動が促しやすいポジションなので楽に歩行ができる。

というメリットがあります。

後方腋窩介助の選定

  • 重心が後方にあり、よく後ろにふらつく方
  • 障害部位はが片麻痺などの左右非対称ではない方

何といっても、後方腋窩介助は、左右への重心移動が促しやすいのでリハビリにもってこいだと感じます。

私は、骨盤を把持した後方骨盤介助も行います。足が断然前に出やすくなりますよ。

まとめ

歩行介助のコツと、代表的な4種類の介助方法、選定方法等を解説しました。

 

細かい介助方法はどうであれ、介護者と要介護者が、安全で、楽に歩けたらそれで問題はないと思います。

決して無理をせず、くれぐれも、転倒事故に注意してくださいね!

 

シロマツ
最後までお読みいただきありがとうございました!
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