という方へ。
先日、理学療法士の私が初めてご利用者さんの装具作成に関わりましたので
本記事では、理学療法士や作業療法士の方向けに装具作成手順や知っておくべき内容を紹介させて頂きます!!!
在宅で装具を作る機会が少なすぎる問題
という方も多いと思います。
理由として考えられることは・・・
- そもそも装具を作成する必要のある患者は、急性期から回復期へ転院して装具を作成して退院するので、在宅で装具を作成する必要がない。
- 訪問看護ステーション、訪問リハビリテーション事業所に装具がないため、評価ができない。
- そもそも、理学療法士、作業療法士が在宅での装具作成手順がわからない。
- 利用者が装具の必要性を感じていない。そもそも装具って何?という状態。
- 家族が装具の必要性を感じていない。そもそも装具って何?という状態。
- ケアマネジャーが面倒臭がって装具作成したがらない。そもそも装具って何?という状態。
- 主治医が装具の必要性を感じていない。又は面倒臭がって装具作成したがらない。そもそも装具って何?という状態。
以上です。
在宅で装具を作成する利用者が少ないことがわかると思います。
後ほど解説しますが、在宅で装具を装着することでADLが向上が見込めて、尚かつ本人、家族、ケアマネジャー、主治医が装具作成に前向きというケースははっきり言ってかなり少ないのです。
そもそも装具を見たことや装着したことがない人からすると・・・
ってなることが多いので、最初の壁がかなり高いのです。
装具作成の手続きを全て理解しようとするとややこしい
「在宅+装具作成+手続き」なんかでググって見るといろんなサイトが出てきますがその種類や流れを見てみるとかなりややこしいです。
装具を作成する場合、まず下記の7種類のうちどれにに該当するかを確認する必要があります。
義肢・装具が必要になった時から、申請・支給(納品)、支払い、代金還付までの種類
- 各種医療保険制度による給付[治療用]
- 労災保険による療養(補償)の費用の支給[治療用]
- 生活保護による医療扶助
- 自動車事故などの第三者行為災害による補償
- 障害者総合支援法による補装具費の支給[更生用]
- 戦傷病者特別援護法による補装具の交付[更生用]
- 労災保険による義肢等の支給
上記の7つのうち在宅で作成となった場合、多くは下記の3つによる手続きがメインかと思います。
1,各種医療保険制度による給付[治療用]
3,生活保護による医療扶助
5.障害者総合支援法による補装具費の支給[更生用]
それから、診察、証明、処方、制作・支払い、請求・・・などなど一連の流れを理解しておいたほうが良いのですが、ややこしいのでシンプルに3STEPで考えましょう。
STEP1:装具を作成できる条件が揃っているか?
STEP2:義肢装具会社へ依頼する前に確認すべき内容を確認する
STEP3:義肢装具会社へ依頼
これで道は開けるはずです。
STEP1:装具を作成できる条件は揃ってる?
装具を作成できる条件は色々ありますが、私は2つの条件があると考えます。
①身体的+生活環境:装具を作ることで大きなメリットがあるか?
②本人・医療福祉スタッフの理解:本人&家族または本人の在宅医療、福祉に関わっている人たちの理解があるのか?
順に解説してます。
①身体的+生活環境
- 装具を作成し、装着することでADL動作能力の向上が見込めること。
- 日常生活で装具の脱着ができる身体機能または環境があること
装具を作成したところで動作が良くならないし、ADLやQOLの向上が見込めない場合は作っても仕方がないですよね・・・
これらの条件が達成可能かを見極めるにはリハビリ職種の臨床能力、経験が重要になります。
作成したほうが良い理由を、しっかりと本人・家族や医療・福祉スタッフに主治医に具体的に説明できるようになっておきましょう。
歩行に関しての知識について不安な方は下記記事を参考にして下さい。
-
歩行分析~観察すべきポイントと臨床でよくみる異常現象のまとめ~
続きを見る
②本人・医療福祉スタッフの理解
次に必要なのは、本人・医療福祉スタッフの理解です。
- 本人または家族が装具の必要性を理解している。
- 担当ケアマネジャーが必要性を理解している。
- 主治医が装具の必要性を理解している。
- 本人または家族が装具完成後に市区町村役場へ行き、簡単な手続きができる。
- 一括で装具代金を支払える経済状況か?(例:プラスチック短下肢装具で約5万程度(装具会社によって異なる))
- 主治医が補装具費支給意見書を作成可能であること。
①身体的+生活環境と②本人・医療福祉スタッフの理解が揃えば、とりあえずは装具作成への扉が開けます。
上記の条件の中で、本人、ケアマネジャー、主治医の理解が一番の難関です。
大抵はここで躓いて装具作成に至らないケースがほとんどです。
さて気になった方もいると思いますが「補装具費支給意見書を作成可能な医師であるか?」って・・・なんじゃこれ?と思いますよね。
装具を作成するには医師が記載した装具支給意見書が必要になるのですが、医師なら誰でも書けるわけではありません。
意見書が書ける医師(指定医)の要件についてはこちら
ここで理学療法士が知っておくことは、補装具費支給意見書は誰でも書けるものではないんだなということです。
念のため一度、医師に補装具費支給意見書かけますか?と確認してみましょう。
もし本人とケアマネジャーが作成を希望していて、主治医が意見書を書けない場合は、最寄りの義肢装具会社に相談してみましょう。
STEP2:義肢装具会社へ依頼する前に確認すべき内容
すべての条件が揃って、装具作成できる!となった場合、装具会社に依頼しないといけません。
医師が全て段取りしてくれればありがたいのですが、当然のことながらほとんどの医師は動いてくれません。(義肢装具士と日頃から関わりのある医師なら別ですが・・・)
なので主に言い出しっぺの理学療法士が段取りすることになります。
装具会社に連絡するその前に色々と確認しておくことがあります。
確認しておくことを理学療法士目線でリストにまとめてみました。
確認しておくこと
- 主治医がいつも取引している装具会社を確認しておく
- その装具会社が在宅での装具作成に対応しているか確認しておく。
- 主治医と、装具作成は主に誰が装具士と相談して進めていくかを話しあっておく(大体は理学療法士がメインに進めていく事が多い。またリハビリの訪問時間に合わせて装具士が同行するケースが多い)
- 利用者の保険証の種類保険証の種類(社会保険?国民健康保険?後期高齢者医療被保険?)
- 装具料金を一括で支払えれるか?生活保護か?
- 疾患、年齢、住所等の基本的情報
- 身体障害者手帳を持っているか?
- 装具作成は1本目?2本目?(治療用?更生用?)
- 足のサイズ
- 装具の仕様(下肢装具の場合・・・金属支柱付き短下肢装具?SHB?継ぎ手は?可撓性は?)
- 自宅の近くに駐車場はある?(多くの義肢装具士は車で移動するため)
- 在宅でのリハビリは何曜日の何時に介入しているか?(その時間に装具士が同行して評価することが多い。)
上記の表の1.主治医がいつも取引している装具会社を確認しておくについてですが、理学療法士が好き勝手に装具会社を選んで良いわけではありませんので、必ず主治医に予め確認しておきましょう。
もし主治医から装具会社を自由に選んで良いと言われたら、いつでもメンテナンスを依頼できるように最寄りの装具会社に依頼しましょう。
STEP3:義肢装具会社へ連絡。
さて、ここまで確認を行えば義肢装具会社へ連絡して、装具作成の旨と先程の確認すべき内容を流れで伝えていきます。
また、ここで装具士に作成後の書類手続きの流れも聞いておきましょう。(家族・ケアマネジャーが動く必要があるのか?等)
全て問題なければ、あとは訪問日などを設定して装具の型取り、後日装具を引き渡しして完了です。
作成後の書類手続きに関して、私の場合は義肢装具会社が臨機応変に対応してくださりました。
まとめ
気づいた方もいると思いますがリハビリ職種がメインで動く場合、在宅での装具作成は確認・準備・段取りが8割ということです。
在宅での装具作成に関して、強い権限を持っているのはやはり医師と義肢装具会社ですが、利用者の生活に一番身近な理学療法士が率先して舵を取っていかなければなりません。
そして重大なトラブルを防ぐためにも、しっかりと一つ一つのことを確認していかなければなりません。
すごく面倒なのですが、装具を作成して何か一つでもADLの改善すれば苦労してよかったと思うはずですよ!
注意
この記事はあくまで私の経験談に基づいた内容なため一つの参考程度にして頂き、不明な点があれば作成依頼予定の義肢装具会社さんへ連絡相談をお願いたします。
より詳細に知りたい方は補装具費支給事務ガイドブック-平成30年度告示改正対応版-をご確認下さい。