無痛分娩のリスクや事故、死亡率などを解説~体験談も~

投稿日:2017年11月18日 更新日:

先日うちの妻が、無痛分娩を行って無事、元気な赤ちゃんが生まれました。

妻も私も、無痛分娩を知らなかったときは「事故のリスクが高くて怖い出産方法」という印象でしたが、勉強するほど、恐怖が少しずつ和らいできて、挑戦することができました。

 

今思うと、その恐怖の正体は「無痛分娩を知らない」ことによるものだったのかもしれません。

 

誰だって「麻酔を使う陣痛の無い出産方法!」と聞けば、そんなうまい話があるわけない!何か裏があるんじゃないの?と思うのが普通だと思いますし、実際に最近のニュースでは死亡事故などが取り上げられています。

なので、怖いと思う方が当たり前ですよね。

でも、その「怖い」という感情は、何を根拠に感じているものなのでしょうか?

ほとんどの方が「ニュースで死亡事故が報じられたから」「何となく」という方が多いと思います。

もし、無痛分娩を検討している妊婦さんがいらっしゃれば、ただただ怖がるのではなく、自らが勉強して「無痛分娩を知ること」だと思うんです。

どこまでがわかって、どこまでがわからない。その境界線をしっかりと引いて、わからなかったことは主治医に聞いた上で、無痛分娩を検討するべきです。

 

今回は、医療職の端くれである私が、無痛分娩について調べた内容(リスク、事故、死亡率、無痛分娩の手順)や、嫁の体験談&立ち会って得た内容を綴ります。

無痛分娩を検討されている妊婦さんや、ご家族様にお役に立てればと思います。

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無痛分娩・和痛分娩の違いは?

無痛分娩・和痛分娩とは、ご存知の通り、麻酔を利用して、陣痛などの痛みを緩和させる出産方法を言います。

無痛分娩と和痛分娩の違いは、医学的にも明確な違いはなく、同じ意味です。

実際、無痛分娩だからといって、痛みが全く無いのかというとそうではありませんので厳密にいうと「和痛分娩」という表現の方が適切かもしれません。

医療機関によって呼び方が違うと認識していればよいと思います。

ここでは、「無痛分娩」と読んでいきます。

無痛分娩のメリット・デメリット

無痛分娩のメリット

  • 陣痛が緩和されるので、リラックスして出産できる。
  • 産後の体力回復が早い。
  • 負担が少ないので心臓や肺など疾患を抱えている人に勧められることもある。

無痛分娩のデメリット

  • 費用が掛かる
  • 無痛分娩が行える医療機関が限られている。
  • 周りの目が厳しい(痛みから逃げたなど避難される可能性がある)
  • 麻酔による副作用、トラブルの可能性がある。

陣痛の強度は、初妊の場合「がん性疼痛より強く、指切断と同じくらいの痛み」といわれているので、それが緩和されるのは、一番のメリットです。

そんな痛みに耐えて、自分が生まれてきたんだなと思うと、本当に女性の方には頭が下がる思いです。

 

一方、デメリットでは「周りの目が厳しい」&「麻酔による副作用、トラブルの可能性がある」ことで無痛分娩を躊躇してしまう妊婦さんも多いと思います。うちの妻もそうでした。

無痛分娩では愛情が芽生えないのか?

お腹を痛めて生んだ子供だから母性が湧く。無痛分娩だと愛情が持てないのではないかと不安な方もいると思います。

医学的に母性行動には、脳下垂体前葉という箇所から、プロラクチンというホルモンが産生されることにより生じるといわれています。

陣痛の大きさとこのプロラクチンの産生量などには、関係がないので、痛みの有無はさほど重要ではない言われています。

無痛分娩の料金

通常の分娩費用に加えて「10万前後」の病院・施設が多いようです。

 

過去に、都会の大きい病院で普通分娩を行ったのですが、4人の狭い集団部屋で55万円くらいしました。

今回は、田舎の個人病院で無痛分娩にチャレンジ。個室で、毎日ご飯が超おいしいという好条件にも関わらず50万円でした。

正直、最高だったと妻は話していました。

世界の無痛分娩状況

無痛分娩が行われる割合を、日本産科麻酔学会が紹介しています。

  • アメリカ:61%(2008年)
  • フランス:80%(2010年)

このデータは、約7〜10年過去のものですが、現在は約90%という話もあります。

実際に2017年度の厚生労働省の資料では、フランスは97%が無痛分娩と記載がありました。

一方、日本では2.6%(2007年)でしたが、日本産婦人科医学会の全国調査で、2016年に実施率が5.2%だったと報じられています。

なぜここまでの差が開いているかというと「日本の出産に対する価値観」と「麻酔科医師不足」が影響していると言われています。

 

日本の出産に対する価値観は「痛みを伴って子どもを産むことが母親の役目」であったり「帝王切開など医療介入しない産み方を美徳とする価値観」があります。

このように努力・根性を美徳としてる日本人は、陣痛に耐えてこそ立派な母親になれると信じており「無痛分娩行うこと=痛みから逃げた」という印象と持ってしまう方が多いようです。

個人的には、そのような価値観には反対です。どちらにしろ女性は命がけ子供を産むのですから、どんな出産方法であれ、勇敢な女性には変わりありません。

 

また、日本は全国的に麻酔科医が不足しており、無痛分娩よりも、ほかの手術に回ってしまうことが現実としてあるそうです。

その影響もあり、日本ではまだまだ無痛分娩が可能な病院、施設は少ない状態です、

羨ましいことにフランスなどは国策で麻酔科医を充実させており、ほとんどの病院、施設で無痛分娩が受けられる体制にあります。

無痛分娩の死亡率

2017年8月に日本産婦人科医会が、2010年~2017年2月までの母体死亡例271例のうち無痛分娩は14例と報告しています。

またその中で麻酔による合併症が直接の死亡原因である事例は1例であったと「母体安全への提言2016 Vol.7」の中で発表しています。

 

一方、厚生労働省研究班は、2010年1月~2016年4月の間に報告された妊産婦死亡者数を報告しています。

全体の妊産婦死=298名

そのうち、無痛分娩による死亡者=14名

全体の死亡数のうち「4%程度」です。

 

しかし、無痛分娩が行われた全件数がわからなければ、安全か危険かを判断できません。

近年増加傾向にありますが、無痛分娩の実施件数などの実態は正確に把握できていないようです。

まず無痛分娩の割合は、近年、増加傾向にあると思われるが、その実態は正確に把握されていない。そもそも 2007 年の調査も全国の分娩施設を対象におおよその無痛分娩
の割合を尋ねたアンケート調査の結果(巻末資料 2 参照)からの推測値であり、必ずしも正確ではない。

引用:母体安全への提言2016 Vol.7

無痛分娩を行った際に届け出をする義務がないので、全体の実施数が把握できていないようです。

ここで、無痛分娩死亡率を割り出すために、ざっくりとした計算をします。

年間出産数の100万人のうち、毎年、普通分娩で50名ほど妊婦さんが、お亡くなりになっています。

なので、普通分娩の妊産婦死亡率は「0,005%」程度です。

 

一方、2016年度の無痛分娩の実施数は普通分娩数の5%程度なので、5万人程度が無痛分娩です。

そのうち、6年で死亡数が13名。単純に年に2人程度がお亡くなりになっている計算です。

なので、無痛分娩の妊産婦死亡率は「0,004%」という計算になります。

(あくまでザックリとした妊産婦死亡率を出すためにした計算で正確な数値ではないので、ご理解ください。)

まとめると、普通分娩の妊産婦死亡率は「0,005%」に対して無痛分娩の妊産婦死亡率は「0,004%」ということになります。

普通分娩と無痛分娩の妊産婦死亡率はそんなに変わりません。

 

そんなら無痛分娩にしたろ!!!と言いたいところですが、実際に死亡率に含まれるのは、下記のような条件があります。

  • 「妊産婦死亡率」とは出産後42日以内の死亡数をカウント。
  • 「早期新生児死亡率」と「周産期死亡率」は、生後1週間以内の死亡数をカウント。
  • 「新生児死亡率」は生後4週間以内の死亡率をカウント。

出産時に何らかのトラブルによって、障害を負ってしまったり、延命治療などによってカウントする期間を過ぎてしまった場合は、違う病名で処理される可能性もあります。

実際に2008年に厚労省の研究班の調査では、妊娠や出産で亡くなった妊産婦は公表されている人数より35%多いことがわかったようです。

 

なので「無痛分娩が影響している全ての死亡件数を正確に把握できていない可能性がある」ということを知っておく必要があります。

ですが、無痛分娩自体が危険なのであれば、フランス、アメリカに事故や死者が続出して、中止になっているはずです。

そう考えると「無痛分娩自体に明らかな問題はない」と考えるのが普通じゃないでしょうか。

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無痛分娩のリスク

無痛分娩は、陣痛を起こす「陣痛促進剤」を投与し、子宮の痛みを取り除く「硬膜外鎮痛法(硬膜外麻酔)」を投与します。

硬膜外麻酔と陣痛促進剤のその両方にリスクがあります。

陣痛促進剤のリスク

陣痛促進剤の副作用は吐き気、不整脈、下痢などなど多岐に渡るようです。

その中で、最も注意するべきリスクは「過強陣痛」です。過度に子宮が収縮してしまい「子宮破裂」や「胎児機能不全」を起こしてしまう可能性があります。

一般的には陣痛の間隔や、胎児の心拍数などをモニタリングしながら投与されます。何かあればすぐに医療スタッフや医師に相談する必要があります。

硬膜外鎮痛法(硬膜外麻酔)のリスク

無痛分娩での麻酔は「点滴麻酔」と「硬膜外鎮痛法(硬膜外麻酔)」の2種類があります。

実際に行われるほとんどが硬膜外鎮痛法(硬膜外麻酔)と言われています。

 

硬膜外鎮痛法は、腰からカテーテル挿入し、硬膜外腔に入れて、麻酔を注入する方法です。

 

硬膜外麻酔を打って、赤ちゃんにも麻酔が効いてしまったらどうしよう…と不安になります。

しかし、硬膜外麻酔が直接的に胎児、新生児に与える影響は、ほぼないとされています。

 

母体への直接的な影響や副作用は下記のようにいわれています。

  • 下半身の感覚が鈍くなる、力が入らなくなる
  • 母体低血圧
  • 尿が出づらくなる
  • かゆみ
  • 母体発熱

無痛分娩では、少し、いきむ力が弱くなるので、吸引分娩となる確率が、少し上がるといわれています。

 

上記以外の重要なリスクとして

  • 硬膜穿刺後頭痛
  • 局所麻酔中毒
  • 脊髄くも膜下腔に麻酔薬が入ってしまう

などがあり、最悪な場合、重篤な状態や死亡する可能性も否定できません。

 

先ほどご紹介した母体安全への提言2016 Vol.7に、記載されていた無痛分娩を行って死亡した例の原因による内訳です。

  • 麻酔薬による中毒死:1人
  • 羊水塞栓症など:13人

麻酔薬による死亡例は1件のみで、その他の羊水塞栓症などは無痛分娩のみではなく、普通分娩にも起こるものなので、無痛分娩特有のリスクではないといわれています。

しかし、死亡した例は、緊急時に適切な対応ができていなかったということで、2016年に日本産婦人科医会の妊産婦死亡症例検討評価委員会が提言を行っています。

無痛分娩を提供する施設では、器械分娩や分娩時異常出血、麻酔合併症などに適切に対応できる体制を整える

引用:母体安全への提言2016 Vol.7

また、2017年4月に、厚生労働省の研究班も、医療機関に対して、無痛分娩を行う際には「十分な医療体制を整えることを求める」緊急提言を行いました。

無痛分娩は、医師の高度な技術が必要となります。

何かあったときに、何でも対応できる病院側の体制が重要になると思います。

もし、無痛分娩を検討されている方がいらっしゃれば、

  • 病院側が緊急時にどのように対応してくれるのか?
  • 今までの実績、事故数は?

など必ず聞いておいた方が良いと思います。

無痛分娩の体験談と手順・流れ【妻の体験談】

無痛分娩を行う際に、実際に妻に行われていた手順です。

  1. 無痛分娩について説明を受ける
  2. 分娩日の決定
  3. バルーン(メトロ)を挿入
  4. 硬膜外麻酔・陣痛促進剤を投与
  5. 出産

無痛分娩について説明を受ける

無痛分娩の希望して、お医者さんから詳しい説明を受けました。

妻は不安がいっぱいで、質問をたくさんしたようなのですが、非常に良いお医者さんで、妻が不安にならないように、全ての質問に丁寧に回答してくれました。

また、トラブルがあったときの対処法なども、詳しく説明してくれました。

無痛分娩を希望の方は「過去にその病院で、無痛分娩での死亡者は出たのか?事故は起きたのか?」を必ず聞いておいた方が良いです。

そこで話を濁す場合は、あまり信用できないかもしれません。

計画分娩~分娩日の決定~

無痛分娩は基本的に計画分娩となる病院が多いと言われています。

私たちも計画分娩だったので、予め分娩日を決定しました。

個人的に金曜日に産んでくれた方がゆっくりと土日にお休みでできるので、金曜日で希望したら通りました(笑)

これは本当に助かりましたね。妻と病院に感謝です。

なぜ計画分娩になるの?

無痛分娩には,大きくわけて2種類あります。

  • 選択的誘発無痛分娩:分娩開始前から計画する分娩方法です。いわゆる計画分娩です。
  • 転向型無痛分娩:分娩開始後に進行の状況に応じて麻酔を適用する方法です。

フランスやアメリカでは,病院に麻酔科医や認定麻酔看護師が常勤しているので,転向型無痛分娩が24時間可能な体制です。
しかし、日本では,産科医や麻酔科医も不足しているため、計画的誘発分娩がメインとなります。

卵膜剥離(内診グリグリ)

よく内診グリグリと呼ばれていますが、正式名称は「卵膜剥離」といいます。

子宮壁から赤ちゃんを包んでいる卵膜を剥離して陣痛を誘発させます。

このときは、とくに麻酔等を行っていませんので、少し痛みがあったようです。

バルーン(メトロ)を挿入

2~3㎝程度子宮口が広がると、バルーン(メトロ)を挿入し、さらに拡大していきます。

このときも特に大きな痛みはなかったようです。

硬膜外麻酔と陣痛促進剤を投与

硬膜外麻酔は熟練した技術が必要と言われています。

横向きに丸まった姿勢を取り、背骨の腰あたりに投与するのですが、麻酔注入中に動いてしまうと針がブレて違う場所に投与される恐れがあるので、絶対に動いてはいけないと言われていました。

注入中は、少しチクっとするくらいの痛みだったということです。

出産~全力でいきむ~

いきめない方もいるみたいですが、妻は、問題なくいきめました。

無痛分娩では、温痛覚(暖かい・冷たいなどの感覚+痛みを感じる)の神経のみを麻酔しているので、少し力は弱くなるものの、問題なくいきめる方がほとんどのようです。

 

妻は、無痛分娩に満足していて「これだったらいくらでも産めそう!」と話していたのですが、それは勘弁して下さいと思いました(笑)

ただ、親や親せきなどは、無痛分娩=危険という認識なため、説得するだけの知識やデータが必要かと思います。

まとめ

無痛分娩について私が調べた内容と、妻の体験談を聞いた情報をまとめました。

出産後、妻は子供が生まれてくる瞬間をしっかりと見れて、体力に余裕のある状態で喜びを噛みしめ、夫婦で分かち合えました。

今回は、無痛分娩を行ってもらって良かったと思います。

 

無痛分娩は立派な女性の権利です。

様々な意見があると思いますが、女性が自由な出産方法が選択できる世の中になれば良いな。と男ながらに感じました。

シロマツ
最後までお読みいただきありがとうございました!
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