「統合と解釈」って何を書けばいいのやら…パソコンの前でフリーズする実習生の方も多いはずです。
本記事では、統合と解釈のわかりやすい書き方や例文、最後に考察との違いなどを解説しています。
この考えが必ずしも正解とは言えませんが、宜しければ参考にしてください。
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統合と解釈の定義・目的とは?
辞書での意味は、下記のようになっています。
- 統合=二つ以上のものを合わせて一つにすること。
- 解釈=言葉や文章の意味・内容を解きほぐして明らかにすること。また、その説明。
引用:goo国語辞書より
辞書での統合と解釈は「全ての情報を合わせて、答えを導き出す」という感じですね。
一方、理学療法・作業療法での統合と解釈を、西守らはこう定義してます。
統合と解釈とは、 患者の動作能力レベルと検査結果との因果関係を結びつける作業である。
統合と解釈はまさしく定義そのものです。
動作観察で得た所見と検査結果を結びつけて統合と解釈を行い、障害像と問題点を明らかにしていきます。
統合と解釈を書く準備
統合と解釈で具体的に何を書けばよいかといいますと・・・
- 動作観察・分析で得られた情報と、情報収集・検査結果との関連性
- 機能障害と活動制限との関連性
- 機能障害の原因を突き詰めて考える
- 機能障害自体の相互関係
- 活動制限自体の相互関係
- 障害の予後
だからこそ、統合と解釈の一番大事なことは「情報の整理整頓」
たくさんある複雑な情報をなるべくシンプルに整理していく必要があります。
下記の手順でシンプルに情報を整理して、統合と解釈を書く準備をしましょう!!
統合と解釈を書く準備
- Need・Hopeに沿った評価を行う
- 概念地図を書く
- ICFを書く
1:Needs、Demandに沿った評価を行う
統合と解釈を書く前に、そもそもなぜ統合と解釈が必要なのかを理解しましょう!
統合と解釈の意義は「障害像を把握して、患者、家族のNeeds、Demandを満たすリハビリテーションを実施するため」です。
ちょっと復習
- Needs=客観的に必要な機能や動作
- Demand(Hope)=主観的な訴え、要望
詳細は下記記事で詳しく解説していますのでお読み下さい。
-
リハビリでの主訴,Need,Hope,Demandの違い,例について
続きを見る
そう。全ては患者さんのため。
患者さんのNeed、Demandが含まれていない統合と解釈はセラピストの自己満足でしかないのです。
例えば自宅復帰するには移乗動作自立が必要なのに、歩行を中心に評価してたり、統合と解釈してたらおかしいと思いませんか?
Need、demandを捉えた評価は、いわば建物の基礎と同じ。
これがブレブレだと後の組み立て作業が不安定となり、筋の通っていない文章になります。
だからこそ、Need、demandを考慮した上で、対象となる動作を決めて、それらをしっかりと評価することが大事なのです。
そうすることで、しっかりと筋が通った統合と解釈が書けますよ!
2:概念地図を作る
Need、Hopeに沿った評価が終わってからすぐに統合と解釈を書いていくのは、ややこしくなるので禁止です。
まず概念地図を書いて、自分の考えや情報を整理しましょう!
概念地図とは?
概念地図とは、1970年代にコーネル大学のジョセフ・D・ノヴァクらが開発したもので、様々な概念を視覚化する技法のこと
それでは概念地図を作って行きます。
紙でもパソコンでも良いので、理学療法評価で得たすべての情報を書き出しましょう。
評価で得た情報(例)
- 80歳代男性
- 腰椎圧迫骨折、腰椎椎間板ヘルニア、中等度の腰痛あり。
- 腰椎圧迫骨折のため1か月安静にしていた。
- 高齢の妻と二人暮らし
- リハビリ意欲は高い。
- 妻は高齢で介助ができないため、在宅復帰にはトイレ動作自立が必須。
- 既にトイレには縦手すりがついている。
- 縦手すりを持っての立位保持は、膝折れが見られる。
- トイレでの更衣動作も困難。
- 下肢の全体筋力がMMT2であった。
- 関節可動域には問題はない
そして、なぜ?なぜ?を繰り返して、情報同士を線で結びます。
できた関連図はこちら。
概念地図を作るポイントは下記の3つ。
- とりあえず情報を全部書き出す
- なぜ?を繰り返し、因果関係を考えながら情報同士を線で結ぶ
- 物語、ストーリーを想像して構成する
最終目標から、なぜ?を繰り返し、最終的には疾患に辿り着ければOKです!
概念地図を作成していく段階でよく矛盾が生じます。
その場合は、教科書&文献などで一般論を勉強して、どうしてもわからない場合は実習指導者に相談しましょう。
3:ICFを作成する
関連地図ができたら、それぞれICFに落とし込んでいきます。
ちょっと復習!
ICFとは「International Classification of Functioning, Disability and Health」と言い、日本語では「国際生活機能分類」と呼ばれています。
2001年に世界保健機構(WHO)で採択されました。
ICFでは「健康状態」「心身機能・構造」「活動」「参加」「環境因子」「個人因子」をそれぞれ約1500項目に分類し、それぞれが相互作用していると考えられています。
- 心身機能(body functions):身体系の生理的機能(心理的機能を含む)
- 身体構造(body structures):器官・肢体とその構成部分など、身体の解剖学的部分
- 活動(activity):課題や行為の個人による活動
- 参加(participation):生活・人生場面の関わり
- 環境因子(environmental factors):人々が生活している物的・社会的環境を構成する因子
- 個人因子(Personal Factors):個人の人生や生活の背景
ICFに落とし込んだのがこちら
もうここまで来たら、完全に患者さんのイメージがつきますね。
中には、統合と解釈を書いてからICFを書く人がいますが、おすすめできません。
なんでもそうですが、まずは着地点を決めてから書き始めたほうがうまく書けますよね。
ICFは統合と解釈の答えのようなものです。まずは答えを決めてからそこへ向かって統合と解釈を書きましょう。
なので、統合と解釈を書く前に、必ずICFや概念地図を先に作ってください。
さぁ完成しましたら、次はいよいよ、統合と解釈を書いて行きましょう!
統合と解釈の書き方!例文を交えて解説!
概念地図やICFで考えを整理・整頓したところで統合と解釈を書いていきましょう。
作業は簡単。
概念地図とICFをストーリーに沿って文章化するだけです。
統合と解釈の内容や書き方の手順はセラピストによって異なりますが、今回は私が毎回意識している統合と解釈の書き方の手順で解説していきます。
統合と解釈の書き方の手順
- ざっくりとした症例説明を書く
- 獲得すべき動作を書く
- 現状の動作のどこが異常なのか?
- 原因はなにか?
- 評価結果は?
- 今後、必要となる機能
STEP1:ざっくりとした症例説明を書く
いきなり動作や機能障害の説明をしたって、誰にも伝わりませんよね。
まずは大雑把でも良いので、症例がイメージできるように冒頭で説明していきましょう!
どんな疾患で、既往に何の疾患があるのか?
もとはどんな生活、ADLをしていたか?などを書くと想像しやすいですよね。
例文
本症例は、80歳代の男性で、201○年○月○日に自宅内の段差で転倒し、腰椎圧迫骨折を呈した症例である。
既往歴にはL4、L5の腰椎椎間板ヘルニアがあり、中等度の腰痛により、自宅内は車椅子で過ごしていた。
STEP2:何の動作を獲得すべきなのかを書く
さて、ここから問題を提議していきます。
なぜリハビリが必要で、何の動作を獲得が必要なのかを、needs、demandに沿って書いていきます。
例文
本人、妻は在宅復帰を強く望んでいる。
現状のADLに関して、寝返り、立ち上がりは自立している。
しかし、トイレ動作の安全性が低下しており、介助を要している。
妻は80歳代と高齢であり、介護力は乏しいため、現状のままでは在宅復帰が困難である。
そのため、在宅復帰を行うためにはトイレ動作の自立が必要であるため、トイレ動作について述べていく。
STEP3:現状の動作のどこが異常なのか?
さて、先ほどトイレ動作について述べましたが
わかりやすくするためにも、トイレ動作を細分化していく必要があります。
トイレ動作を細分化すると下記のようになります。
- 立ち上がり動作
- 立位保持
- 下衣下げ下ろし動作
- 着座動作
- 清拭動作
- 水を流す
- 立位保持
- 下衣を上げて、上衣を裾に入れる
- 方向転換
- 着座
動作を細分化して、どのフェイズでできないのかを書いていきましょう。
例文
トイレ動作を細分化すると、立ち上がり動作→立位保持→下衣下げ下ろし動作→着座動作→清拭動作→水を流す→立位保持→下衣を上げて、上衣を裾に入れる→方向転換→着座にわけられる。
本症例の場合、立縦手すりを把持し、立ち上がり動作は可能であるも、次の立位保持時に膝折れが出現し、安全性が阻害されている。
STEP4:原因はなにか?仮説を立てていく
動作ができないフェイズを記載したら、仮説を立てていきましょう。
力学的、生理学的、神経学的などの様々な視点があると思います。
でも、視点が多すぎると内容もややこしくなるだけなので、慣れないうちは重要な視点のみ記載した方が良いでしょう。
例文
矢状面からの立位姿勢は、股関節、膝関節屈曲位、足関節背屈位である。
そのため、重心線から膝関節へのモーメントアームが長くなり、通常の立位姿勢よりも大腿四頭筋の筋力が要求される。
本症例は、3ヶ月間の入院により活動性が低下していた影響により、筋力が大幅に低下している可能性が高い。
そのため、膝折れは筋力低下により引き起こされている可能性がある。
STEP5:評価結果と照らし合わせる
立てた仮説が正しいのかどうかを記載していきます。
例文
股関節、膝関節、足関節の関節可動域の測定を行ったが、著名な可動域制限を認めなかった。
下肢筋力を評価実施すると、股関節伸展、膝関節伸展がMMT2で筋力低下を認めたため、膝折れの原因は大殿筋、大腿四頭筋の筋力低下と思われる。
STEP6:今後の生活について書く
問題点を記載した後は、動作が獲得できる可能性や今後の生活について述べていきましょう。
例文
本症例は、リハビリテーションのモチベーションが高く、病棟での自主練習も積極的に行われている。
また、血液検査から低栄養なども認めないため、積極的に腰痛の緩和や、筋力増強練習、動作練習を行うことで動作の獲得は可能と思われる。
今回の統合と解釈はあくまでわかりやすくするために情報を少なくした例です。
実際の症例ではもっと、情報量が増えて複雑になります。
でも、慣れないうちは思考をシンプルにし、徐々に複雑にして行くほうが良いでしょう。
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統合と解釈と考察との違い
学生さんから、統合と解釈と、考察との違いは?とよく聞かれます。
セラピストによって考えは異なりますが、私の考えを述べていきます。
実習レポートでは「統合と解釈」が使用されて
症例発表なんかでは「考察」がよく使用されていますね。
辞書での「考察」の意味は下記のようになっています。
考察=物事を明らかにするために、よく調べて考えをめぐらすこと。
引用:goo辞書
考察とは「見た・調べた結果(事実)から、物事を明らかにするために深く考える」ことを言います。
統合と解釈も、評価した結果を自分で考えて因果関係を明らかにするので、ある意味では考察として捉えられますが、個人的に下記のように認識しています。
- 統合と解釈:患者の障害像を把握するための複数の検査結果とそれに対する考察の集合体。
- 考察:ある一つの議題について深く考える作業
症例発表などでは、検討する項目があらかじめ決まっていることが多いため、部分的に絞った「考察」が書かれています。
一方、統合と解釈は考察することがたくさんあるため、統合と解釈で書かれています。
部分的に深く考察した内容なのであれば、独立した項目を作っても良いでしょう。私の場合は実習生に下記のように指導しています。
- 初期評価:統合と解釈のみ。
- 中間〜最終評価:統合と解釈に考察を追加。(治療プログラム後の再評価を踏まえて、プログラムや問題点を再考する過程を考察として書く)
考察を書くにも、一体何について考察しているか?が大事なので、「〇〇についての考察」という一文を入れた方がわかりやすくていいでしょう。
例えば「治療プログラム立案にあたっての考察」や「問題点再考にあたっての考察」などなど。
でも、やっぱりバイザーに聞くのが一番無難ですかね…
考察・統合と解釈の違いは、前もって実習指導者に確認しておきましょう。
まとめ
統合と解釈の書き方、例文、考察との違いなどを解説しました。
症例を担当すると情報が多くて、統合と解釈を書くと、どうしても複雑になってしまいがちです。
なので、まずは情報をシンプルに整理整頓することが大事です。
そのためにもまずは、概念地図やICFなどを用いて図式化することが良いトレーニングになります。
みなさまの実習が少しでも有意義になるように願っています。