よく、膝に水が溜まるなどよく聞くと思いますが
これには病名があり、関節水症または関節水腫(英語:hydrarthrosis)と言います。
- 水を抜いたらクセになる?
- 放置しておいて良いの?
- どう対応したらいいの?
たくさんの方に見られるが故に、上記のような疑問を持つ方も多いと思います。
今回は、よく見られる関節水症(関節水腫)の原因、メカニズム、リハビリなどを解説していきます。
関節水症(関節水腫)の原因・メカニズムは?
膝関節の関節包内には、膝の動きを良くするための滑液に満たされています。
「膝に水が溜まる」の「水」というのは、「滑液」のことを言います。
いわば、膝の潤滑油のような役割をしています。
滑液は、少し粘度のある無色透明で、成分は主に、ヒアルロン酸とタンパク質です。
関節軟骨は、血管がないので、この滑液から、栄養を補給しています。
その滑液は、関節包中の滑膜で作られ、軟骨に栄養を与え終わった滑液の老廃物は、毛細血管や、リンパ管を通って排出されます。
このように、滑液は関節包内を代謝循環しています。
まとめますと、滑液の代謝は下記の順で行われます。
- 滑膜が滑液を産生
- 滑液が軟骨に栄養を与える
- 不要となった滑液は、毛細血管やリンパ管を通って排出
しかし、なんらかの原因で、軟骨などがぶつかり合って出た組織の破片が滑液に混じると、異物と察知するために、過剰に滑液が分泌されます。
また、過剰に分泌された滑液は、吸収が間に合わず、滑液の分泌量>滑液の吸収量となり、その結果、関節水症・関節水腫となります。
関節水症(関節水腫)の症状
症状として、下記のように認めます。
- 膝蓋骨(膝のお皿)がプヨプヨと浮いているような感じ
- 膝関節内の痛み
- 炎症、腫脹、熱感
- 関節可動域制限(膝が曲がらない、伸ばせない)
また関節包や周辺の軟部組織は、神経が多く存在しており痛みを感じやすくなります。
なので主症状は、痛みが多く、重度となると荷重時に痛みを認め、歩行が困難となるケースもあり日常生活に支障を来します。
関節水腫の診断、評価
有名な評価方法として、膝蓋跳動試験(ballottement of patella test)があります。
- 方法:膝の脂肪を引き寄せて、膝蓋骨を固定して、上から指で軽く圧迫します。
- 陽性:骨と骨があたるように、コツコツという音が聞こえ、感じる。
その他の評価のポイント
- 腫脹:左右差を比較しましょう。
- 炎症:赤くなっていないか、左右差を比較しましょう。
- 熱感:手のひらで触れるのではなく、手の甲で触れましょう。
関節水腫・関節水症の原因疾患は、変形性膝関節症によるものが多いです。
しかし、場合によっては、他の疾患の可能性もあります。
そのため、関節包の滑液を、注射器を使用して、採取して検査する必要があります。
これを「関節穿刺(かんせつせんし)」と言います。
関節穿刺の主な目的はこちら。
- 関節包内の減圧させて、痛みを軽減させる。
- 診断が明らかでなければ滑液の検査
採取された滑液は、外観、貯留液量、粘度性、たんぱく質量、白血球数、細菌の有無等を調べ、診断の材料に使用します。
正常 | 非炎症性 | 炎症性 | 化膿性 | |
外観 | 透明・淡黄色 | 半透明、黄色 | 不透明、膿性 | |
粘度 | 高 | 低 | 高~低 | |
疾患 |
変形性膝関節症 外傷 |
関節リウマチ 膠原病 痛風 |
化膿性関節炎 など |
急性外傷後は、関節血症となる
もし、外傷後の膝関節の腫脹には、関節水腫のほかに、組織からの出血による「関節血症(関節血種)」かもしれません。
外傷後に、関節水症のような症状が現れた場合は、必ず診察・関節穿刺してもらいましょう。
水を抜くとクセになる?
水を抜くと、クセになるとありますが、これは真っ赤なウソです。
水が溜まるのは、膝関節の炎症が治っておらず、まだ滑液が分泌され続けているからです。
しかし、水が溜まれば、抜く。を繰り返すのではなく、滑液が異常分泌しないよう、現疾患の治療対応が重要になります。
治療
関節水症・関節水腫は、基本的に、現疾患の影響により出現する二次的なものであり、現疾患の治療が適切に行われなければ、あまり効果を期待することはできません。
なので、関節水症・関節水腫の治療は、現疾患の治療と、並行して行われます。
治療は、現疾患によって、服薬や対応も変わってきますので、一概に言えませんが、基本的には、服薬と安静になります。
リハビリテーション
基本的な治療は、服薬+安静となりますが、安静となると、筋力の低下や、関節可動域制限などが出現するリスクが増加します。
そのため、廃用予防+歩行補助具の選定などが必要となります。
- 関節可動域練習:膝周辺の筋のストレッチ、膝関節のモビライゼーション等を行います。
- 筋力トレーニング:主に、関節ポンプ作用のあるパテラセッティングが有効と言われています。
- 歩行補助具の使用:松葉杖や免荷ができる歩行補助具の使用で荷重量をコントロールします。
- 装具療法:サポーターを使用して、膝を保護したり、弾性包帯などで適度に圧迫します。
もちろん、現疾患によってリハビリの内容が大きく変わる可能性もあるため、Drとの連携が重要となってきます。
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まとめ
関節水症・関節水腫に関して解説しました。
現疾患があっての二次的な疾患であるため、現疾患を早めに対処しなくてはなりません。
安静は必要なのですが、長引くと関節可動域制限や、筋力低下の原因になるため、痛みのない範囲でリハビリテーションを行う必要があります。