この記事では、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋(Triceps surae muscle)のストレッチ、筋力トレーニング、起始、停止、作用、神経支配などを解説していきます!
下腿三頭筋(Triceps surae muscle)
下腿三頭筋は、解剖学的に2つにわけられます。
- 腓腹筋(Gastrocnemius muscle)
- ヒラメ筋(Soleus muscle)
なぜ腓腹筋とヒラメ筋の2つの筋肉で作られているのに、下腿三頭筋なの?下腿二頭筋じゃないの?と疑問に思いますよね。
実は腓腹筋は、内側頭・外側頭の2つにわけられます。
なので、厳密に言えば下腿三頭筋は
- 腓腹筋内側頭
- 腓腹筋外側頭
- ヒラメ筋
で構成されているから、下腿三頭筋なのです。
腓腹筋とヒラメ筋は足関節付近で合流し、アキレス腱を形成します。
アキレス腱と足関節との隙間には「Kager`s fat pad」という脂肪体で満たされており、衝撃吸収作用があります。
また下腿三頭筋(ふくらはぎ)は「第2の心臓」と呼ばれています。
理由は、腓腹筋とヒラメ筋の内部には弁が存在しており、筋が収縮することで血液を上部に押し上げる「筋ポンプ作用」があるからです。
長時間立っていたり、座っていると筋ポンプ作用が使えず、血液が心臓へ返らないために浮腫みやすくなります。
次に腓腹筋を解説していきます!
腓腹筋(Gastrocnemius muscle)
腓腹筋の起始・停止
起始 | 大腿骨内側上顆、外側上顆 |
停止 | アキレス腱となり踵骨隆起に付く |
神経支配 | 脛骨神経(L4~S2) |
作用 | 足関節底屈、膝関節屈曲 |
腓腹筋はふくらはぎの表面を覆っている筋肉で、医療やスポーツの世界ではよく「ガストロ」と呼ばれています。
形はアルファベットの「Y」のような形をしており、内側頭と外側頭にわかれています。
腓腹筋の特徴としては、膝と足首を跨いでいる「2関節筋」というところです。
そのため、腓腹筋が収縮することで得られる作用は「足関節底屈」と「膝関節屈曲」の2つです。
足関節底屈とは?
つま先を下に向ける動作のことを言います。
ちなみに膝関節屈曲は、膝を曲げる動作です。
腓腹筋は「人体の中で最も強力な筋」と言われており、歩いたり、走ったりする際に強力に働きます。
その反面、筋短縮しやすく、最も関節拘縮になりやすい筋肉ともいわれています。
寝たきりの方のほとんどが、この腓腹筋の短縮によって関節拘縮が作られています。
腓腹筋の触診
腓腹筋の触診は簡単です。
ふくらはぎのほとんどが腓腹筋に覆われているので、触れない方が難しいくらいです。
でも、しっかりと腓腹筋を触診したい!という方は、腓腹筋のみを収縮させる必要があります。
方法:うつ伏せ(腹臥位)で足関節を底屈したまま、膝関節を屈曲させると腓腹筋のみの収縮を感じることができます。
腓腹筋内側頭・外側頭の触診
腓腹筋内側頭:アキレス腱の中心から内側が腓腹筋内側頭、外側が腓腹筋外側頭です。
腓腹筋外側頭:アキレス腱の中心から外側が腓腹筋外側頭
先程と同じくうつ伏せ(腹臥位)で足関節を底屈しながら、膝関節を屈曲させるとわかりやすくなります。
ヒラメ筋(Soleus muscle)
ヒラメ筋の起始・停止
起始 | 腓骨頭、脛骨ヒラメ筋線 |
停止 | アキレス腱となり踵骨隆起に付く |
神経支配 | 脛骨神経(L4~S2) |
作用 | 足関節底屈 |
腓腹筋の深層にあるのがヒラメ筋です。
ヒラメのように見えるからそのように名付けられました。覚えやすいですね。
腓腹筋は「二関節筋」であったのに対して、ヒラメ筋は足関節のみを跨ぐ「単関節筋」です。
よって、作用としては足関節底屈の作用しかありません。
ヒラメ筋の特徴としては、赤筋であること。
赤筋は、血管を多く含んだ筋なので持久力に優れています。
なので、ヒラメ筋は、歩いたり、走ったりする瞬発的な動作よりも、主に立位などの姿勢保持に働きます。
(ちなみに腓腹筋は白筋です。白筋は持久力に乏しいですが、瞬発力に優れています。)
ヒラメ筋の触診
腓腹筋の触診と比べて、ヒラメ筋の触診の難易度は高いです。
まず、うつ伏せ(腹臥位)で膝関節を曲げたまま、つま先を立てます(膝関節屈曲位のまま足関節を底屈)
そうすることで、腓骨頭の外下方にヒラメ筋の上縁を確認できます。
ヒラメ筋を触診する際は、腓腹筋が収縮していないか内側頭、外側頭を触診して確認しておきましょう。
下腿三頭筋のストレッチ
立ちながらのストレッチ
誰もが一度は行ったことがあるストレッチですね。
よく反動をつけてストレッチを行う方がいますが、筋を痛めたり損傷する恐れがあるため、ゆっくりじわじわと20秒ほど掛けて伸張させることをおすすめします。
立ちながらのストレッチ(ヒラメ筋のみ)
ヒラメ筋のみをストレッチさせる場合は、膝関節屈曲位で行いましょう。
そうすることで腓腹筋が弛緩するので、純粋にヒラメ筋のみストレッチすることが可能になります。
座りながらのストレッチ
もし、立つことが難しい方は、タオルを足の裏にタオルを引っ掛けて、引っ張りましょう。これなら高齢者の方でも安全に行えます。
徒手的なストレッチ
徒手的に行うには、治療者に行ってもらう必要があります。
- 踵を手のひらで包むよう持つ
- 安定させるために、反対側の手は下腿を把持する。
- 足関節を中心に回転させるように背屈させていく。
- 前腕に足の裏を押さえつけるようにする
しっかりと下腿三頭筋をストレッチしようとするとコツがいるので、練習が必要です。
※ヒラメ筋のみをストレッチさせる場合は、膝関節屈曲位で行いましょう。
起立台を使用したストレッチ
今まで色々とストレッチ方法を紹介しましたが、正直これが一番おすすめです。
下腿三頭筋はすごく固い筋肉なので、徒手などで伸張するのには限界があります。
でも、起立台を使用することで、体重を利用して下腿三頭筋を伸張できるので、すごく効果的です。
また、起立台に乗るだけなので、楽で継続しやすい。
個人的には、La-VIE(ラヴィ) ストレッチボードが値段が安くおすすめです。私も使用していますが、ストレッチ効果は充分です!
下腿三頭筋の筋力トレーニング
高齢者から健常者まで可能なように負荷量を3段階にわけてご紹介していきます!
低負荷
膝を伸ばしながら足首を底屈します。
足の浮腫みのある方はこの運動を繰り返すことで軽減することもあります。
イスに座りながら、足首を底屈します。
厳密にはヒラメ筋のトレーニングになります。
負荷量を変えたい場合は、太もも(大腿)に圧迫を加えていきます。
中負荷
つま先立ち(ヒールレイズ・カーフレイズ)
両脚でつま先立ちをヒールレイズ、カーフレイズと言います。
下腿三頭筋のオーソドックスな鍛え方です。
しかし、下腿三頭筋が弱っている方は、代償的にお腹が前面に出るような姿勢でヒールレイズを行ってしまいます。
このような姿勢になると下腿三頭筋に負荷が与えられておらず効率的なトレーニングにはなりません。
その場合は、背中・骨盤を壁にピッタリと密着させた状態で行うことで、代償を抑制できるのでおすすめします。
階段を使用したステップ練習
下腿三頭筋の遠心性収縮を促したいときは、階段を使った運動をおすすめします。
階段につま先のみを荷重して、反対側の足を上段に乗せます。
そうすることで地面を蹴りだす練習になります。
高負荷
片脚ヒールレイズ(片脚つま先たち)
更に負荷量を上げたい場合は、鉄アレイなどを持ちながら行いましょう。
まとめ
下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)のストレッチや筋力トレーニングなどを解説しました。
日常生活のあらゆる動作で下腿三頭筋は使われます。
大事にしていくためにも日頃からのケアやトレーニングに役立てていただければうれしいです。