膝関節の指標は、FTA角や、ミクリッツ線などが有名ですが
本記事では、膝関節の膝蓋骨の評価に重要な「Q角」について解説します。
教科書や参考書を見ても、詳しく解説されていないことが多い指標なので、参考にして頂ければ幸いです。
Q角とは?
「Q角=Quadliceps Angle」の略です。
大腿四頭筋が、膝蓋骨を牽引する角度のことを言い、下記を結んだ線の角度から測定されます。
- 上前腸骨棘〜膝蓋骨中央
- 脛骨上縁〜膝蓋骨中央
Q角の正常値
Q角の正常値に関しては、論文によってばらつきがあり、測定条件によっても異なります。
背臥位+膝関節完全伸展+大腿四頭筋収縮では、男性10°、女性15°
背臥位+膝関節完全伸展位+大腿四頭筋弛緩で約13~18°
立位+大腿四頭筋弛緩では、男性20°、女性22°
更には個人差もあるため、一概には言えないのが現状ですが
正常値は「背臥位+膝関節完全伸展+大腿四頭筋収縮で、男性10°、女性15°」とされていることが多いようです。
また上記でもありましたように、大腿四頭筋の収縮時と弛緩時でQ角は異なります。
理由として、大腿四頭筋は膝蓋骨に対して少し外側に作用します。
そのため大腿四頭筋を収縮させた状態であれば、膝蓋骨がやや外側へ偏移するために、Q角は小さくなります。
他にも、Q角を決定する要因はたくさんあります。
- 肢位
- 大腿四頭筋収縮、弛緩
- 膝関節の内外反角度
- 膝蓋骨の位置
- 大腿骨と脛骨回旋角度
Q角は様々な要因により影響を受けますので、計測値以外にもどのような条件で測定したかを記録しておきましょう!
Q角とFTAの違い
FTA(Femoro-Tibial Angle)は、下記の線で構成される角度のことを言います。
- 大腿骨の中央を通る線
- 脛骨の中央を通る線
-
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FTAは、「膝の内外反の指標」で、Q角は「どれほど、膝蓋骨が外側へ牽引されやすいのか?」を示しています。
Q角増大によって起こる異常と要因
Q角の増大・減少はそれぞれ下記のようになります。
- Q角の増大:外反膝傾向
- Q角の減少:内反膝傾向
Q角が増大すると、膝蓋骨を外側に引く力が強くなり、「膝蓋骨脱臼」を引き起こします。
Q角の増大の原因は、下記の通り。
- 内側広筋の弱化
- 内側膝蓋支帯の損傷
- 内側側副靭帯の伸張、損傷
- 外側広筋・大腿筋膜張筋の過緊張
内側の筋や組織が弱化、損傷することによるものが多いですが、他にも股関節や足部のアライメント異常でも引き起こされます。
Q角が増大すると、何がダメなの?
なぜ、Q角が増大すると、膝蓋骨脱臼を起こすのでしょうか?
それは内側広筋などの弱化により、外側広筋や大腿筋膜張筋が膝蓋骨を外側へ牽引してしまうためです。
またQ角の増加により膝関節の運動に伴って関節面に大きな負担となり、関節軟骨が摩耗が進行して将来的に変形性膝関節症となる可能性も高くなります。
他にも膝だけではなく、骨盤、股関節、足関節などの機能不全につながりやすくなります。
Q角の改善には、内側広筋の強化・外側広筋・大腿筋膜張筋のストレッチ
Q角の増大は、大腿骨や膝蓋骨の形態異常であれば、改善は難しいかもしれません。
しかし、筋による原因であれば改善する可能性があります。
一般的なリハビリテーションは、主に内側広筋の筋力強化や、外側広筋、大腿筋膜張筋などの大腿外側に付着する筋の伸張(ストレッチング)を行います。
パテラセッティング
内側広筋の筋力増強にはパテラセッティングなどが用いられます。
膝の後面にタオルを敷いて、足関節背屈しながら、踵を前方へ押し出すように、膝関節を伸展します。
この時、踵に負荷を加えることで、力が入れやすくなりますよ。
股関節伸展・内転・内旋を加えることで、内側広筋の収縮が増強するといわれているので、意識して行いましょう。
大腿筋膜張筋のストレッチ
外側組織では、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯、外側広筋などが筋緊張を起こしやすくなります。
そのため、しっかりとストレッチを行いましょう。
まとめ
Q角についての基礎知識、FTAとの違いや簡単なリハビリをご紹介しました。
Q角を増大・減少させる要因は多数あり、理解しようとすると、運動連鎖などの理解が必要となります。
あまりQ角を計測する機会も少ないかもしれませんが、知識としては重要なので覚えておきましょう!